第9話 こっちでは初登場のユミー先輩

「なんか、アズリア遅いなぁ〜」


「そうだな。どっか行ったんだろ?」


夜中でも、夕焼けの様に明るく照らされる祭りの中。


俺と隆一は屋台と屋台の間で少し座りながら休憩をしていた。


俺は片手に焼きそばを持ち、流れていく人達を観ていた。


「それにしてもいろんな人が一杯いるな〜」


「ウチの学校の制服着てる人も何人か居るな。」


まあ、そりゃあ、起眞高がここから一番近いし、居るのは当然と言えるだろう。


「とりあえず、クラスメイトとかは居そうか?」


「いや、あんま見えないな…まあ、居たとしても、カップルとかだったら流石に邪

魔しない様にはしないとだよな…」


「ま、そうだな〜」


万が一、そんなカップルが居たとしても、俺には、カップルの知り合いなんて一人も居ないけど___


「あ!見てくださいユミーさん!射撃屋さんがありますよ!やらないんですか?」


「え?射撃屋?今日はもう一回かまして来たんだよな…」


見知った声が聞こえ、俺はそちらの方向へと視線を向けると、そこにはカップルっぽい人たちが居た。


「え?Vさん?」


俺が、ショートヘアーで着物の振袖を揺らしている女の人に話しかけると、女の人は、気づいたようで、「あ」と言わんばかりの顔で「霧矢君?」と聞き返す。


「ということは、そちらは…ユミーさん?」


俺が視線を向けた先に、黒髪の男の人は、「霧矢…だっけ?来てたんだな!」と気づく。


「え?え?誰?」


一人だけ隆一が、取り残された状態に気づいた。

そういえば、こいつは知らないのか。


「えっと、この人たちは、起眞高の2年のVさんとユミーさん。多分、カップル」


「「カップルじゃない!」」


このシンクロ率でカップルじゃないのを否定するのは難しいだろうという本音を置いていき、今度は、隆一の挨拶をする。


「こっちは隆一です。一応俺の親友」


「一応って何だよ!」


隆一がツッコミを入れた後、ユミーさんが、手を前に出して、

「俺は、ユミー!よろしくな!」

と自己紹介をする。


隆一は、その出した手を握り、「俺は隆一です!よろしくっす!ユミー先輩!」と答えた。


「V先輩もよろしくっす!」


「え?あ、よろしくお願いします。」


「V先輩は俺の部活の先輩でな。一年のことの面倒を良く見てくれる人なんだ。」


「へ〜、そうなんだ。てか二人とも本名?」


あ、聞きにくいことを今…


すると、ユミー先輩が、少し慌てながらも、「え?あ、本名だよ?」と答えた。

前からわかっていたが、多分本名ではないだろ…


流石に信じるわけが…


「ああ!そうなんですね!」


信じた!?まじで?

小学生でもわかる嘘だろ…


「それよりも、今日はどうしてここへ?」


「まあ、見ればわかるかもだけど、Vが来たいって言ったからさ」


「Vさんが?」


「少しお腹が減ったんです。なので、ユミーさんから頂こうかなと」


ユミーさん良い様に使われてるなぁ…


「と、まあ、私はお腹が減りました。ユミーさん!射撃屋さんの商品のお菓子が欲しいです!」


「は、はぁ…お前…なんか今日は、そういうキャラなのか?」


「はい!今日はユミーさんに甘える日です。覚悟していてください。なので早く射撃屋にいきましょう。」


「はいはい。あと射撃屋じゃなくて、射的屋ね。」


「そうとも言いますね。」


すると隆一が、少しにやけながら、「やめておいた方が良いですよ〜」と言う。


こいつ、さっきの自分の失敗を先輩達がすると思ってんだ…


「どうして?」


「それ、難しいですから〜」


「そうか?俺はもっと遠くの奴も狙えるぞ?例えば、200mとかな」


200って、ユミーさんは狙撃手でも何かか?


「そんじゃ、10発お願いします。」


「はいよ!!」


銀色の皿の上に置かれたコルト弾に手を伸ばす。


「念のため測っておくか。」


そういうと、ユミーさんはスマホを取り出し、ストップウォッチを開く。


「それじゃあ、3…2…1」


ユミーさんは素早くコルク弾を取り出し、銃口へと詰めた。


「初め!!!」

と言ったと同時に、銃口に詰められたコルク弾が、見事お菓子の箱に命中し、お菓子の箱は、棚の奥へと倒れる。


そして、ユミーさんは1秒も経たない内に、新たなコルク弾を詰めながら射的の銃の横のレバーを引く。引いたと同時に持ち上げて、慎重に狙う素振りも見せず、お菓子の箱の一つにコルク弾を発射。


「え?」


そこからまるで工場の機械が流れ作業をするように、どんどんと、お菓子の景品を落としていき、最後の一発は、ユミーさんの趣味を挟んだのか、一番上の棚にあった、拳銃のエアガンを撃ち、そして、棚の下に落とした。


「7.5秒!!ちょっと…遅いかな〜」

な、7.5秒驚きの記録に言葉が出ない俺は、真横に居た隆一を見てみる。


「え?あ、え?なんで?」


どうやら、このアズリアよりも早く、正確な射撃に戸惑っている様子だった。


まあ、そうだろうな…俺も実際戸惑っているし。


「どんなもんよ!!」


「ありがとうございます!最近少しお金が無かったので助かります」


「ま、俺もグロック17のエアガン、安物っぽいけどゲットできたし。ま、俺はミッションは達成できたな!」


というと、最後に落としたエアガンの箱をあけ、パッケージの中の本体を取り出す。


どうやら銃の名前はグロック17というらしく、ユミーさんは、相当気に入っているのか、それを見ながら、笑みを浮かべている。


「この感じが良いんだよ」

と言いながら、ユミーさんがエアガンを触っているところを見ていると、後ろから、「霧矢くーん!」という聞き慣れた声がする。


「あ、奏音!」


どうやら、奏音とアズリアがトイレから帰って来たらしい、奏音はやたらと元気ではあるが、なぜかアズリアは少し足元がふらついている。


「ねえ!みんな!って…あれ?」


俺らを呼ぶ、奏音の声が俺らから一回、Vとユミーさんの方向へ移る。


「あ、こんばんは」


「あれ?V先輩と…V先輩の彼氏さんじゃん!」


「か、彼氏じゃない!!」


今度はVさんが少し顔を赤らめて言う。

屋台の提灯も相舞って余計に顔が赤く見える。


「そうですか?じゃあ、ユミー先輩はどうなんですか!!」


と今度は奏音はユミー先輩をキラキラと輝かしい目で見る。


「え?俺!?」


どうやら思いもよらない矛先に戸惑うユミー先輩は、頭の後ろをポリポリと爪で書きながら、じろりと汗を垂らす。


「え、ええっと…」


ユミー先輩の回答には、奏音だけでなくVさんも気になっているようで、横目ながらにユミー先輩の方へと視線を送っている。


「お、俺は…まあ、Vがどう思うかで良いと思うけどな…」


「な、なんですかそれ!?」


Vさんは少しキレたようで口を大きく開けて眉をみそめている。


「えー!!じゃあ、Vさんがユミーさんの事を彼氏って言えば、ユミーさんは彼氏になるって事ですか!?」


「え…ま、まあそういうことでもある…のかな?」


こいつ安全圏の中からV先輩を狙ってやがる!!!!!!

後はVさんに任せますよ〜的なことを言ってやがる!!!!

自分で言ってて恥ずかしくないのか!?


「ですって!!V先輩!!どうするんですか!?このままの流れもありなんじゃないんですか!!」


奏音のおかげもあって、この作品がちゃんとしたそういう回になろうとしてるな…

今まで日常って感じでしか無かったのに…


「あ!う…うぅ…」


さらにVさんは何かに気づいたのか、顔を赤く染める。

今にも爆発しそうだ。


「それじゃあ…そういうことで…お願いします…」


「え?そういうこと?」


俺は訳がわからず、V先輩の言葉を繰り返した。


「それってまさか…」


「カップル成立ってこと!?ヤッター!!!!!!!」


となぜか当の本人たちよりも喜んでいる奏音。

Vさんは顔を両手で隠し、ユミーさんは少し顔が赤くなっている。


まだ現実を受け入れていないのか、ユミーさんは、目をパチクリさせている。


「お、おめでとうございます?」


「え?あ、ありがとう?」


「ほら〜!V先輩〜!キスぐらいはした方が良いんじゃないですか〜?」


奏音はこっそりとV先輩の耳元に静かに囁いた。


「キキキキキキキ、キスですか!?まだ早すぎるのでは!?」


「早いに越したことはありませんよ〜!それよりも早く!!!」


V先輩がすごい動揺しているせいで、今食べていた、かき氷が吹き出そうになっる。


V先輩はとても赤く顔を染めて、立ち上がる。

何か決意をしたのか、とても強い握力で拳を握っている。


「ユミーさん!!!こっち向いてください!!!」


ユミー先輩がこちらを振り向く。

すると、V先輩は間髪入れずに、ユミー先輩の口に自身の口をつけた。


後ろで花火が咲く。


「ちゅ」

甘酸っぱい音が鳴った後、そっとV先輩はユミー先輩から離れる。


V先輩は「うぅ!!!!」と言いながら後ろを向く。


ユミー先輩はというと、魂が抜けたように顔が白くなっていて、とても話しかけられそうには無かったが、「お、おいしー」と言う魂の叫び声のような言葉だけは発せることができたようだ。


「な、な、な、な、な、な、な!!!!!何を言っているんですか!?!?!?」


と言いながら、「おいしー」と行っていたユミー先輩は、ピンポイントで鳩尾を殴られる。



俺が見た二人の青春だった。








あとがき

今回登場した、ユミー先輩とV先輩!!

今回はこのお二方の登場する物語、「電脳特殊捜査隊第六課」とのコラボ回となっていて、これはインターネット世界に入り込める主人公、ユミーが色々な犯罪者と戦う、現代ファンタジー物になっています!!!!

フラ直(フラれた直後に(以下略))とは真逆の物語となっており、今はまだ序盤なので、興味がある方はぜひ、よろしくお願いします!!!!!

最悪な贈り物でした!!!!!


※ちなみに霧矢とユミーたちが出会うシーンもあります


リンク

「電脳特殊捜査隊第六課」

https://kakuyomu.jp/works/16818093081632466679




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