第2話 尋問〜恋愛警察リュウイチの日常〜

「良い写真撮れた〜」


霧矢がぴょんぴょんとスキップしながら夕日によって照らされる学校の廊下を歩く。


「どしたん?話きこか?」


俺は気配を消して霧矢の後ろから話しかけた。

と、同時に霧矢は「ぐやああああ!!!」と言いながら、地面に尻餅を突いた。


「お、おめええええ!!!どこにいやがった!!!!」


「追跡してた。」


「追跡してた!?」


そう。なんか胸騒ぎがした俺は、教室に向かう霧矢の背中を実は追っていたのだ。


「なんか、さっき凄い顔赤かったね。どしたん?話きこか?」


俺はニヤニヤとにやけながら言った。


「べ、べ、べ、別に何もねぇよ!!!!」


「シャイニングスター♪綴れば〜♪夢に眠る幻が〜♪」


「黙れ!!!!」


俺は真顔で霧矢を見つめる。


「な、なんだよ!!!」


「いや、初々しいなぁ〜。実に面白い!!!」


「黙れこの理系が!!!」


実は俺は理系なのだ。


「そんなことよりも早く帰ろうぜ。お前の話聞きてぇわ!」


俺は尻餅ついた霧矢に手を貸す。


「クッソ!このやろぉ…」


霧矢はその皮肉な言葉を発した後俺の手を掴み立ち上がった。




米ここから霧矢視点だぜ


「で?何があったんだ?」


にやにやとしながら隆一は俺の顔を舐め回すようにじっとりと見る。


くそ…小一の時に好きな人バラされたんだ…

言ってたまるか…!!


奏音カノン


顔面の温度が急上昇した。


「おやぁ〜?霧矢くぅ〜ん!お顔が真っ赤ですよぉ?」


「う、ウルセェ!!」


商店街の前を通り過ぎる。

夕日の沈む商店街前には沢山の人で賑わっており、大半はお母さんのような40代あたりの女性がほとんどだった。


「べ、別に良いじゃないかぁ!!!き、気にすんな!!!」


「全く〜これだから餓鬼は〜」


隆一はヤレヤレと言った風に両手をあげて首を横に振った。


「誰が餓鬼だ!!!」


「そうだ!コロッケ買おうぜ!肉屋の匂いがする!」


「話を逸らすな!!!」


いや、逸らしていいのか…?

俺は少し隆一のマイペースな姿に頭を悩ませた。


「しかのこのこのここしたんたん♪しかのこのこのここしたんたん♪しかのこのこのここしたんたん♪」


白い湯気と肉の良い匂いを漂わせるコロッケを両手に持ちながら隆一は洗脳されそうな曲のopを歌う。


「お前…2つも食ってんのか…」


「一ついるか?」


と隆一は左手に持っていたまだ手の付けていないコロッケを差し出してくる。


「じゃ、じゃあ、一つもらうわ。」


俺は隆一の左手からコロッケを受け取り、少しだけじっとりと見た後、一口頬張った。

肉汁が口の中に溢れ、それと同時にコロッケの肉の匂いも広がった。


「うめえ」


隆一は、ニヤリと笑いながら

「お前、食ったな?」

とニヤリと笑いながら言った。


こ、これは嵌められた…


「コロッケの礼、今すぐ返してくれ?」


く、くそぉ…

肉のいい匂いにやられてしまったが…これが作戦か!!!


「それじゃあ、俺の質問に答えてもらうだけで、礼と言うことにしておこう。さっきお前、奏音ってやつとの写真撮ってたよな?なんで?」


勢い余ってやってしまったことをこいつ根掘り葉掘りするつもりなのか!?

クソが…!!!!


「え、えっと…そ、その…綺麗…って思ったから…」


「綺麗?それはどういう意味かな???」


「そ、その…い、今までに見たことないほどに…」


「うん!うん!今までに見たことないほどに…???」


隆一は悪魔のような不敵な笑みを浮かべた。

こ、この餓鬼…!!!


「か、か、かわぃv[bt]aoc…」


「なぁに?なぁに?霧矢クゥン、今、なぁんて言った??」


俺は隆一の反対方向に顔を向ける。


「そ、その…い、今までに見たことないほど…び、美人だった…」


隆一はその言葉を聞くと、不敵な笑みを辞め、深いため息を吐いた。


「はぁ…そうですか…」


どうやら、「見損なった」という感じの顔をして、両手でまた、ヤレヤレという風に両手を掲げている。


「し、質問に答えたぞ!!!もう良いだろ!!」


隆一は、含み笑いを漏らして

「お前、すげー顔赤くなってるぞ」

と言う。


「え!?う、うるせえ!!ど、どうせ夕日だ!!夕日で顔が赤くなっているだけだ!!じゃあな!!」


俺はその言葉を隆一に告げると、別れ道の角を曲がって自分の家へと向かった。


後ろからは隆一の明るい「じゃあな〜」と言う声が聞こえて来た。



「ったく、霧矢…隅にもおけねぇヤツだぜ…」





「た、ただいまー!!」


「おかえり霧矢ー」


俺はリビングを通ると、すぐに駆け足で自室に飛び込んだ。

制服を来たまま、自室のベットに寝っ転がる。


「はぁ…これって恋なのか…?」


俺は天井を見ながら呟く。


白いゴツゴツした天井は自宅の安心感を分け与えてくれそうだ。


その時、制服のポケットの中が震えた。


「なんだ?」


俺はスマホを開くと、そこには隆一からのLINEが表示されていた。


なんだろ?


『よお霧矢!これグルチャのURL。お前にも送っとくわ』


LINEを開いたスマホの液晶の中には隆一のその短文と、「招待されました」の文字が添えられているどこかのグループチャットのURLが貼られていた。


「どこのだ?まあ、なんか隆一から招待されたし、一回入ってみるか?」


俺は恐る恐る、そのURLをタップし、トークという所を押した。


『お、きたきた!』

『こいつ誰?』

『霧矢ってやつ。あの、今日の自己紹介ミスったやつだぞ』


トーク画面を開くと、紀眞高1年C組と書かれたチャット欄が現れた。


「こ、これってクラスLINE!?」


は、早いな…今日クラス発表されたばっかなのに…

いや、それよりもそこに招待される隆一もすごいのだが…


『よろしくね!霧矢くん!』

俺はその文字を見て心臓の鼓動が一瞬大きくなった。


そのメッセージを送ってきた相手の名前を何度も読み返す。


可愛らしい、毛並みの整った黒猫のアイコンのユーザーの名前。

それは…


「か、奏音カノン…」


俺は急いで、メッセージを送る。


『こんにちわ。最上霧矢です。好きなことは写真撮影。嫌いなことは、隆一とか言うやつに煽られることです。これからよろしくお願いします。』


『おいおい!なんで俺の名前が入ってるんだよ!!』


『写真撮影!?私も写真撮影が好きなの!!なんか、気が合いそうだね!!』

やたらと「!」のマークが多い、いちごの大盛りパフェをアイコンに設定しているユーザーがメッセージを送信してきた。


次にそのユーザーは何か忘れたように、付け足しの文を送信してきた。


『あ!自己紹介してなかった!私は楠木梓クスノキアズサ!よろしくね!!』


次に、イヤホンの装着した男が、ゲームコントローラーを握っているイラストをアイコンに設定しているユーザーが、メッセージを送信してきた。

『俺は、早川。よろしく』


そして、多分、今いる時点での最後の人。

小林こばやし奏音カノンと本名をユーザー名に設定している、黒猫アイコンのユーザーがメッセージを送信してきた。

『さっきもあったけど、私はカノン!奏音ちゃんでもいいよ〜!えーと好きなことは…特にないかも…あ、でも!ピアノなら少し弾けるよ!とりあえずこんな感じかな〜?』


な、なるほど…ピアノか…

俺もピアノしてみようかな…

じゃなくて!


『他にメンバーは誰かいるのか?』

俺はメッセージを送信するとすぐに、既読が4付いて、そのうちの一人…いつもの隆一が答えた。


『あと、何人かはいるけど、クラス全員はまだ入ってないかな?』


『じゃあ、私からも他の人に声かけとくよ!!』

いちごのパフェのアイコンのユーザーが答える。


『それじゃあ、私からも声かけとくよ!できるだけ全員にね!』


『ありがとう!それじゃあ、お願いするわ』


『隆一俺からも声かけとこうか?』


『あ、頼む早川!』


すごいなぁ〜みんなもう友人関係を築いてんのか〜

俺は、そんなクラスのフレンドリーさに浸っていると、急に部屋の扉が開く。

その音と同時に、母の「霧矢ご飯できたよ〜」と言う声が部屋に響き渡り、俺は


「うわああああ!!!」

と奇声をあげて、ベットの上で30センチほど浮いた。


「あら!まだ貴方制服じゃない!?早く着替えてらっしゃい!」


そう言い残すと、母は部屋から出て行った。


「び、びっくりしたぁー!」


俺は心を落ち着かせると、制服を脱ぎ、クローゼットに仕舞い、スマホを勉強机の上に置いて、部屋を出て行った。


俺は机の上で、ブルブルブルと一時的に震えるスマホを見て、明日がなんだか楽しみになった。


明日は何が起こるんだろうな。

そう考えながらリビングに続く階段を降りた。









隆一くんビジュアル

https://kakuyomu.jp/users/Worstgift37564/news/16818093079061433575







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