第3話 人形天使たちの哀歌
ちょっと3連続で悪夢を書くのに気が引けてきたので、ここは体感型でなく、一歩置いて第三者として見た夢――シネマタイプで気に入っているのを1つ。
◆◇◆◇◆◇
それは人形アニメーションのようだった。
登場人物の男女は、顔や体つきが『ぷよぷよ』のキャラクター・シグによく似た感じの顔だちだった。髪の毛が大きな花ビラを伏せたようにもっさりとした形のところも。
ただ髪の色は水色ではなくフエルト調の金髪で、肌は白っぽいベージュの布地。そこに
かのキャラに似ていたのは姿の造形だけで、とても真剣な顔をしている少年と少女。
2人は白い半袖の上に茶色の胸当てを身につけている。腕にも同じ革製らしき
どうやら彼らの国か種族は戦争をしている最中で、2人は明日それぞれに分かれて戦いに行かなくてはいけないらしい。
2人とも顔の造作が兄妹のようによく似ていたが、それはただ描き分けがされていないだけなようだ。女の子の方が髪が肩にかかるほど長かった。
まわりに何もない場所で話し合う2人の距離は、微妙に間があいていた。
そこで少年が、戦地に行く前に少女に告げようとする。
「ガリィさん、僕は――」
「言わないで!」
遮るように声を発して、くるっと少年に背を向ける少女。
雰囲気的に彼女は彼を嫌いじゃないのだけど、聞けなかったのだと感じた。
それを聞いてしまうと心が揺らいでしまうから、と思えた。
次いで場面が変わり、時が流れていた。
そこはまるで大サーカスのテントの内部のようだった。
丸い舞台中央には太い1本の柱が天井に向かってそびえ立ち、周りを円形状に外側に向かって上がっていく階段型の通路が囲っていた。
時刻は朝か夕か分からないが、テントの布地を通して外の光が強く差し込み、内部を燃えるように照らしている。
それは布地越しのせいなのか、明るい赤ではなく、陰った赤色だった。だから夕陽だったのかもしれない。
テント内の色は、その暮れなずむ暗い赤と、柱や天幕の骨組みが作る陰影だけだった。
そうして風がとても強く吹いていた。
ビュゥウウゥゥ…… ピュゥウウゥゥ…… と鋭く切るような音をずっと立てていて、バサバサと絶えずテントを鳴らしている。
中には誰もいなかった。
サーカスならば誰か観客や団員がいそうだが、人っ子一人気配すらない。
舞台にも道具の大きな四角い箱や檻、ピエロが使うボールの1つすら落ちてなかった。
外から聞こえる風切り音と、バサバササササ……と激しくはためく布の音だけが辺りに満ちていた。
暗赤い天幕と観客のいない円状の座席、ただ中央の柱の上部に大きな鳥籠が1つぶら下がっていた。
よくオウムが入っている縦長ドーム型の鳥籠。
駕籠自体の色も差し込む落ち日に染められて、元が白なのか金か銀かも分からないが黒ではなかったと思う。
それを見上げる彼女の切なそうな斜め横顔のアップ。
細い眉が辛そうに歪む。
彼はあそこで死んだのだ。
戦争で捕まり捕虜となった彼は、鳥人としてあの駕籠に入れられていたのだ。
そう何故か私にもわかった。
今はもう羽の1本たりとも残ってないのに、ふと彼の残した吐息のような思いが聞こえてきた。
『 ガリィさん 僕はあなたが好きでした 』
「…… わたしもです……」
そう言って閉じた青いチャコールの目元から、透明なしずくが珠となってこぼれ落ちた。
夢はそこで終わった。
彼女はあれからどうしたのだろう。
あのドームは未だ何処か見知らぬ土地に誰も訪れぬまま建っているのだろうか。
そこにはまだ、あの翼のある少年の残り香のような想いが漂っているのだろうか。
もしあの時、彼女が自分の心に素直に頷いていれば、2人は自由を求めて逃走していたのかもしれない。
けれど集団としての責任から逃れられず、個を諦めざる得なかったのだろう。
粗筋としてよくある話だと思うが、あの時彼女の視点で見たドームの光景になんとも心惹かれた。
これからも決して明るくなることもなく、さりとて深くなるわけでもない、闇の一歩手前の赤焼けに永遠に染まり続けるだろうドーム。
そこに天井から吊り下がる空になった鳥籠。そうして天幕を揺らす強い風の音。
寂しくて切ない情景のはずなのに、そこには一種の
出来ればそこだけ一片を切り取って、映像に残しておきたいと思った。
どこか小さな映画館でいいから、深夜延々とそれだけを流し続けるのだ。
きっとそこは時の狭間となるに違いない。
◆◇◆◇◆◇
人形アニメーションは一時期ハマったのでその影響かと思いますが、しかしなんで『ぷよぷよ』似だったのか? 我ながら謎です。
特に『ぷよぷよ』のキャラに思い入れがあるわけでもなく、
この夢を見た時はとうに『ぷよぷよ』から『パズドラ』に移行していたものなのですが(´・ω・)
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