3. 赤
「まずは赤いボタンを押された方のテスト結果を発表します」
暗い空間に変化があった。そこかしこに真っ赤な光がともったのだ。
いくつかの席が、赤いスポットライトで照らし出されている。
「この選択をされた方のグループにとって『正義』のもつイメージは、要約すれば『力』です。
悪を倒す正義の『力』。道をはばむものをうち破るための『力』。そういうイメージになるでしょうか」
かたる内容に反して、アナウンスの声色はなんとも言えず白々しい。
「とても古典的なイメージだと言えるでしょう。
正義の具現はすなわち力。破られるものが同じ人間であろうと、かれらが泣こうと苦しもうと。
あるいは何かをうち破ったことそれ自体が、回りまわって後になり、どんな応報をもたらそうとも。
なんの疑問も後悔もなくただひたすらに突き進む」
いったん止まったアナウンスは、高らかなラッパのように闇のなかに響きわたった。
「以上にもとづき、赤いボタンを押された方には、選択された『正義』の産物。『破壊』をお贈りいたします」
そう宣言されると同時に。
あちこちにともる赤い光が燃え上がった。
文字通りに、赤いライトのあたった座席が激しく炎上したのだった。
いや違う。座席にすわった人たちの頭からいきなり炎が噴き出した。
自分自身の身を呑みこんで、華やかに、輝かしく、容赦なく焼き尽くしてゆく。
彼らの行く末をしめすように、赤いライトは立ち消えていった。
「続きまして、青いボタンを押された方のテスト結果を発表します」
相も変わらず白々しいアナウンス。それにふさわしいと言うべきか、冷たい青い光が前から吹き付ける。
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