2. 色




 いつの間に心理テストなんかに回答したんだっけ。


 そんな疑問に応えてくれるアナウンスではないことは、考えなくとも察せられ。




 不安を向ける先を探しても、周りにすわる人びとは誰もかれも、暗がりのなか押し黙ったまま。

 右手の装置は色とりどりのボタンたちを静まり返らせているだけで。

 そのボタンたちに、色がおおいかぶさった。


 前を向けばいつの間にやら、白一色に輝いていたスクリーンが、やはり色とりどりの小さなマスに塗り分けられて。

 それらの中にはイラストと言うかアイコンが、これまた小さく、しかし細かくはっきりと描かれている。




 赤いマスには騎士のアイコン。白い鎧と赤いマントのうえからでも筋骨たくましいのが見てとれ、どこかアメリカン・コミックスのヒーローをも連想させる。


 青いマスには威厳ある白い髭の老人のアイコンだ。賢者、というおもむきは左右の腕にたずさえた、杖と、ぶあつい書物からもかもし出されているようで。


 黄色いマスには、直進する光の帯と、きらめきを表したらしい星たちが、図案化されて描かれている。光のアイコンというところか。


 緑のマスには、おいしげる葉っぱと草花。それらにうずもれ、小さいながらいくつかの家も見てとれた。ごく小さくまとめられた理想郷の絵図のようだ。




 そこまで見てとったあたりで、スクリーンが赤一色にぬり変わった。

 騎士の描かれた赤いマスが目一杯に拡大したのだ。



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