スクリーン

武江成緒

1. 闇




 ふと気がつくと、あなたは椅子に座っている。




 いつのまに映画館へ来たんだっけ。

 そう思ってしまうほど、その椅子は、いや座席は、映画館のものにそっくりだ。


 左にも右にも前にも、おそらくは背後にも、ずらりと同じような座席が並んでいることも。

 その座席のひとつひとつに、服装も、歳も性別もばらばらな人が座っていることも。

 そして、周りがほとんど真っ暗だということまでも映画館にそっくりだ。

 完全な真っ暗闇でない理由は、もちろんはるか前のほうに大きく四角いスクリーンが白く輝いているからで。


 ふと思いついて右手の肘かけをみれば、ドリンクを置くホルダーにかわり、テレビのリモコンにどこか似た装置がとり付けられていて。

 チャンネルボタンとはまた違う、LEDじかけらしい半透明なカラフルのボタンが行儀よく並んでいる。




「みなさまお疲れさまでした。ご回答いただいて、まことにありがとうございます」


 白々しいほどに明るい機械音声のアナウンスが、感謝の念などカケラも感じさせない謝辞をひびかせる。


「それではご回答にもとづく、今回のテーマ、『正義』についての心理テストの結果を発表いたします」


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