ハーレムには入りたくないっ!—①

家から出た俺は駅へ向かった。


俺の家から学校へは電車に乗って30分のところにある。


俺の家のすぐ近くにある駅には各駅停車しか停まらないので結構大変だ。


そういえば駅に来るまでの間、めっちゃ注目されていたような……(特に男)。まあ気のせいだろう。


駅に着いた。


萌え袖のせいで取りにくい定期券入れから定期券を出し改札を通る。


そして、学校近くの駅へ向かう電車が停まる乗り口に行き、そこで待っていると


俺にチャラ男が近づいてきた。


(なんだ?)と思っていると


「ねぇ~~君今からちょっと俺と遊ばな~い?」

と男が声をかけてきた。


「い、嫌です。学校があるので……」


「そんなこと言わずにさぁ~~。遊ぼうよ~~」

チャラ男が俺の手を掴んで連れて行こうとする。


「ちょ、ちょっとやめてください!」

俺は手を離そうとするが男の力が強すぎて離せない。


(誰か助けてくれ……!)

俺は心の中で助けを呼んだ。


「この子は嫌がってるでしょ。離しなよ。」

とチャラ男とは別の男の声が聞こえてきた。


「なんだテメェ…殴られたくなきゃどっか行けよ」


「別にどっかに行ってもいいんだけど…ってあ。君の後ろにかわいい女の子いるよ。」


「な⁉︎マジか!!!」

チャラ男が後ろを向いた瞬間に……。


「んじゃ。さいなら。行こっかそこの君。」


「えっ、あっ、はい……。」

チャラ男に手を掴まれていた俺をチャラ男から離し謎の男は俺を抱っこして走って逃げた。


「可愛い子なんてどこに…⁉︎あってめえ!」


チャラ男が後ろで吠えているが時すでに遅し。


チャラ男と俺らの距離は大分離れていた。


もうチャラ男が追ってくることはないだろう。


「ここまでくれば大丈夫でしょ。…君、制服滝宮のだね。俺も滝宮なんだけど、よかったら一緒に行かない?」


展開が早すぎないか。


助けてくれたのはありがたいが、そもそもこいつが誰か分からん。


一緒に行くのは………うーむ。さっきみたいなことがまたあるかもしれないし……、行った方が良さそうか。


「一緒に行くのはいいんですけど………。あなたは誰ですか……?」


俺は返事のついでに男の名前を聞いた。一応恩人だからな。


名前を覚えておいてまた今度恩を返さないと。


「ん?俺の名前?俺の名前は……、












佐藤海斗。普通の一般生徒だ。俺の幼馴染が待ってるんだ。そいつと合流しよう。」



あっ俺終わった。







●●●



佐藤海斗には幼馴染がいる。


その名は霧山優奈。黒髪ロングの美少女だ。


成績優秀、部活は剣道部で全国レベル……。


さらにどんな相手に対しても平等に優しく接するため、学校中の男子から『大天使』と呼ばれている。


しかし、一方で彼女にはとても怖い部分がある。


佐藤海斗のことになると誰であろうと容赦をしないのだ。


例えばある女子が佐藤海斗に(恋愛的な意味で)近づこうとしたとき、霧山はその女子に向かって


「ごめんっ!こいつは私と”ある約束”をしてるから!泥棒女に入る隙間はないの!ごめんね!あと、



次にこいつに近づこうとしたらてめえぶち⚪︎すからな。さっさと消えろ(放送禁止語)」

                    


女子「ヒッ……‼︎すみませんもう二度と近づきませんだから許してぇーー!!」ダダダ


とこんな感じ。


男の状態だったら佐藤に近づいても大丈夫かもしれなかった。


しかし、今の俺は女だ。


もし佐藤と一緒に霧山に会いに行ったら……。


(おかえり~~って、誰あなた。ぶち⚪︎すぞゴラァ)

って言われるに決まってる!!


行きたくねぇ行きたくねぇ…。


しかしそんな俺の心情を知りもしない佐藤は、


佐藤「ん?どうした?なんかあった?」


と聞いてきた。


(俺の思いも知らずに…こいつッ!あとで一発殴るッ…)


と俺が佐藤を殴ると自分自身に誓っていると


「お!いたいた!勝手にどっかいかないでよ~~」


女の声が聞こえてきた。


まさか……。


「ごめーん!ちょっと人助けしてた!許してっ!霧山!」


「いいよいいよ全然!……っで、そこの女は誰かな?」


やっ、やっぱ霧山じゃん!


だ、誰か助けてくれっ!


 

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