高校時代の憧れだった同級生・豊島直央から突然連絡を受けた平凡な会社員・中野栄多。彼女が東京都知事選に出馬すると知り、彼はその手伝いを引き受けることになります。こうして、無名の新人候補として厳しい選挙戦に挑む二人の物語が始まります。
主人公の中野栄多は高校時代に陰気な存在だった過去を引きずりながらも、豊島直央との再会を機に少しずつ成長していきます。自信のなさと情熱が同居する共感できるキャラクターで、彼の視点から物語が進行することで読者も一緒に成長を実感できます。
豊島直央は明るく社交的でありながら、過去の友人関係の挫折に向き合おうとする勇気を持った人物として描かれています。彼女の「優しくて強い東京」というスローガンは、彼女自身の人間性を象徴しています。
若林由輔や綾瀬しょう子、鮫洲愛斗といった対立候補たちも単なる敵役ではなく、それぞれの信念や背景を持った人物として描かれています。また蓮根あおいの存在は直央や栄多の物語に深みを与え、人間関係の複雑さと修復の可能性を示しています。
さらに、この物語は現代社会の課題にも鋭く切り込んでいます。若者の政治参加とSNSの影響力、メディアの偏向報道と泡沫候補たちが直面する困難など、現代的なテーマが随所に散りばめられ、現代の選挙が抱える課題が緻密に描かれており、読者に政治の現実を考えさせます。
これらの問題に対して直央たちが真摯に向き合い、自分たちなりの答えを模索していく姿は、読者に希望を与えるとともに、自分自身の生き方を見つめ直すきっかけを提供してくれます。都知事選という舞台設定は登場人物たちの内面や葛藤を浮き彫りにする装置として見事に機能しています。
この作品は都知事選という独自の舞台を通じて、人間の弱さと強さ、過去との向き合い方、そして何より「声を上げること」の大切さを教えてくれます。読後感は爽快で、自分自身も何か新しいことに挑戦したくなるような、そんな力強い物語です。
高校を卒業してから12年。
サラリーマンの中野栄多は、元クラスメイトである直央から、都知事選を一緒に戦ってほしいと言われる。
高嶺の花だった彼女の頼みを、栄多はつい了承してしまうが、選挙のことは詳しくないため、勉強しながら頑張ることに……。
そして──。
『ええじゃないか!ナオの世直し!』をスローガンに、ほぼ無名の状態から始まる快進撃。
めちゃくちゃ面白かったです!
選挙をテーマにした本作ですが、まったく堅苦しくなく、政治の話がよくわからなくても問題なく読めます!
特定の政党に肩入れしてる~とか、あの人の政策を批判してる~とかは(たぶん)一切ないです!
メロスばりに政治が苦手な私のような人でも楽しめました!
そして何より、青春ものとしてもすごく良かったです。
抱えた後悔と、それをどうにかして晴らしたいという強い気持ち。
直央と栄多の頑張りがしっかり届くシーンが素敵すぎて……。
本編後の番外編も最高でした!
キャラクターたちにぐっと深みが増して、より彼らを好きになることができました。
東京がいつか、強さと優しさを併せ持った場所になりますように。都民ではありませんが、気づくとそんなことを考えていました。