夏の終わりの雪
宵の始まりに
僕はまた夢の道を進む
埃を払うような風がふくと
師匠である大魔女の窓辺の花壇に
僕はぽつりと座っていた
お久しぶりです
大魔女は
シロツメクサみたいな
気さくでささやかな微笑みと共に
鳥を3羽と、犬を2匹
雨が降るからと窓の中に入るよう手招いて
それから僕に
薬草茶をいれてくれた
ふと、窓辺の花の葉に
卵が数個
うみつけられていて
草花のお手入れに
抜かりのない魔女様らしくないと
『この卵は退治しなくて良いのですか』
と、たずねると
『それはね、カツァラノナミウタハの卵だから、孵るようにみまもっているのよ』
と、教えてくれた。
カツァラノナミウタハ
耳で聴くと
単純な音だけで組み合わされた名前なのに
僕が口にしようとすると、どうしても
うまく音になってくれない
カツァラノナミウタハ、本当はもう少し
いさぎのよい音なのだけれど…
どんな生き物なんですか
と訊くと、
魔女様は宵の空に目をやりながら
『粉雪で織ったような羽で
降りてくる姿が美しくてねぇ…
おまえにもみせてやりたいくらいだよ。』
手をヒラヒラとさせた
『おまえの世界でいう、蚕さんや蝶に似ているかねぇ』
そして、
カツァラノナミウタハの卵のそばには
かならず小さな小さな青いキノコが生えていて
それをシラセダケと呼んでいるんだと
魔女様は青い小さなキノコを
かわいいだろう
と、
見せてくれた
魔女様の笑顔が
僕は一番かわいくて一番美しいと
思うのだけれどね
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童話『the TEA』より
宵の香り
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