第29話 回り灯籠流水の如く
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カチ、カチ、カチ、カチ、
規則正しく針が時を刻む音が伝う家、今日もバタン、ガタガタガタガタ、ガシャンッと不規則な音が描き消した。
物心ついたときから父から暴力を降られてた。泣いたらもっと殴られた。俺がサッカーをしたとき、絵を描いたとき、テストで98点だったとき、俺が何かをしたからだとは分かってた。俺の行動で不快にさせたことを謝ってもその声が届いたことはなかった。
母はボロボロになっても庇うこと無くただただじっと見つめるだけだった。1度だけ、庇ってくれたことがあったけど、俺が間違ってるって言うのかと激怒し2人とも殴られた。そっから母は俺が殴られてるときは何も手出しをしなくなった。父が満足してどっか行ったらやっと俺に駆け寄る。泣いて怯える俺を宥めて同じ言葉を繰り返した。
――ごめんなさい。
――あなたは何も悪くない。
――お母さんが弱くてごめんなさい。
――お父さんは正しいのに、
――あなたはお父さんのように……
――強い人になりなさい――
ほぼ毎日そんな言葉を聞き続けた。それを覚えることはすぐできた。理解することはできなかった。
弱いから殴られるの?間違ってたら蹴られるの?強いから殴ってもいいの?男で強ければ正しいの?女で弱ければ殴られるの?子供は弱いから殴られるの?分からない。父も母もそうだと俺に教えた。そうなんだ、と理解できなかった。今もそう。
弱いと分かってる奴を殴っても強い人となるわけではない。同格の人たちが戦って、その日、一方が圧勝しても別日にはもう一方が圧勝してるかもしれない、引き分けの日もあるかもしれない。自分より確実に強い人に勝ってはじめて強いと言えないの?
一度だけ、父に聞いてみた。でも、父はから返事はなく、ただ、俺を見上げていた。
……そっか……俺がその仮説を証明すればいいんだ。ちょっと探せば強いヤツなんで山程いる。強いヤツを倒せば………は俺は……………………
五月雨事件 牡丹 @9danhila3
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