第26話 短音響く雨の夜

「ごちそうさまでした」

「オイコラ」

 会計をすませ店を出た。外はまだバケツをひっくり返したように雨が降っていた。

「寒ぃ」

「自業自得」

「あれは俺のからだを冷やしたパフェが悪い」

「パフェは冷たいスイーツなんだよ」

「うー」

 レインコートを着てフードを被り歩きだした。歩くっていうよりちょっと早歩きでっていった方が近いな。目的の公園に近づくにつれて人が少しずつ減っていき耳に届く音が雨で染まっていった。

 歩き始めてだいたい5分が過ぎた。視界の右、街頭より低い位置に明かりがあるのが見えた。範囲的に自販機だってすぐ気づけた。

「ここ、か?」

「……」

 

 公園の入り口に立ってるピコリーノにかかってる看板を見た。

”キレイに使おう

          矢高公園”

「…ここであってる」

 俺らは公園に入りぐるっと辺りを見回した。地面は水溜まりはあまりないもののデコボコしていたため川みたいに雨水が流れていた。足の踏み場はあれど確実に靴はビッチャンコだな。

「待って、靴に水染みた」

「俺もう諦めの境地」

「俺が犯人だったら多分犯行どころじゃないと思う」

「わかるー。でも向こうが長靴とかなら気にしなくてもできそう」

「たしかに」

水が染みじわじわと足に気持ち悪い感覚が広がるのを堪え公園内を散策した。もしかしたらどっかに何か隠してる可能性はあると思ったから。とはいえこの公園もそんなに大きくはない。砂場にブランコに鉄棒と、……

「なぁ凌空」

「どしたぁ?」

「あれ取れる?」

「あれ?」

 俺が指差した場所は滑り台の上。そこに何か黒い塊を見つけた。

「あれか、おけおけ」

 凌空は俺が指差した物を理解して黒い塊を取った。黒い塊はチャコールグレーのボストンバッグだった。階段登って取ればいいのにアイツジャンプで取ってた。大雑把すぎるだろ。

「え、なんか軽い……?」

「ま?」

 冗談だと思って両手で受け取った。

「え、は、軽」

 両手で持たんとキツイ見た目のわりに中身空なんじゃないかってくらい軽かった。

「絶対空だって」

「なんかはありそうじゃね?所々ゴツゴツしてたし」

「開けて見てみようぜ」

 俺はビチャビチャの地面にバッグを置いてチャックを開けた。

「ええ?」

 凌空がバッグに手を突っ込み中にあった物を取り出した。

「え、これだけ?」

 凌空の手に握られていたのは1本の木の棒だった。棒はバットともいえないような微妙な形をしていたが細い部分と太い部分があり太い部分は傷だらけでかなり使い込まれてたことが伺えた。

「え、ダミーとかある?」

「いや、こんな狭いところでダミーとか無理やろ」

 滑り台なんて分かりやすい場所に隠すなんて相当バクチじゃん。公園に隠した物を探すならほとんどは下を見るから見つけるには時間はかかりそうだけど、

「どーするよ」

「えー……一旦、戻すか…」

「え、戻すん?」

「だってこれがガチで犯人のだったらないなってんの不審じゃね?」

「バットも危ないやん」

「いや、バットは戻さんよ。危ないやん」

「…………………………あー、なるほど、お前今日頭回ってんな」

「アキ~~~~?」

「はい~~~~?」

 凌空は俺に持ってた木の棒を渡しバッグのチャックを閉めてもとあった場所に戻そうとした。

「それ持っててや」

「うぃー」

 雨でビショビショになったバットは最初に触れた時より冷たく感じた。

「んんーーー、よぉーーーーーー」

 凌空は背伸びをしてもとあった場所にバッグを戻そうとしてた。せめて滑り台の滑る部分活用しろやとはめんどくさくて言わない。

「大雑把だな」

「うるへー、、おわっ」

 ぐんっと背を伸ばしバッグを滑り台の上に届くところでレインコートのフードがパサッと取れた。

 刹那、雨音を切り裂くような短い雷の音が、鈍く重めの音が、地面に何かが落ちた音が1つの公園に響いた。

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