005 俺の報酬

ついでだからと酒場にいた冒険者全員に説教をしていたら神様に呼び戻された。

自分でも帰れるようにしたのは神様なんですけどね。なんで毎回強制的に戻すんですか?


「ご苦労だった。これであの本はまともになるだろう」

「あっ、そこなんですけど。俺が矯正した本ってどうなるんです?」

「まともになる」

「そりゃそうでしょうけど。そうじゃなくてですね、内容ですよ」

「無自覚無双系が、自覚ある無双系になるだけだ」

「それってジャンルが変わっただけでクソなのは変わらないのでは?」

「違う。ちゃんと自分は強い、無双出来る、最強だ、と自覚した上で、場にあった適正な戦いをするようになる」

「そう聞くとまともになってそうですね」

「当たり前だ。だからピンチにもならない」


世界最強の人間が油断もしなきゃピンチにもならないのか…………その作品って、面白いか?

いや、そこは作者の文才で面白くするのだろう。作家だからキンキンキンだけで戦闘描写とかしないから、面白く書くだろうさ。

幸い?書籍は貰っているので、暇な時にでも読んでみよう。


「そうだ、報酬が決まったぞ」

「マジですか?! ありがとうございます!」

「お前の今やっている事を書籍化して販売する。これが報酬だ」

「……どこが報酬?! 嫌がらせでしょ?!」

「心配するな。文章や構成は神である私がする。誰が読んでも面白い作品にする、というかなる。ベストセラー確定だ。

 これで発生する売上は全てお前の物となる。脱税するなよ?」

「いやいやいや、出版社とか!」

「そんなもの、神の力でどうとでもなる」

「ええ~……」

「全世界でベストセラーとなる。そうすればハリウッドで映画化もされるだろう。どれだけ儲かるのだろうな?」


マジですか。

……ん? ちょっと待って?


「儲かるのは分かりました。でもそれって出版して販売して売れて、初めて儲けが出ますよね? それっていつです?」

「お前の働き次第だが、1~2年後になるのではないか?」

「その間、タダ働き!」


やはり異世界から金を持ち帰るしかないのか……?


「理解したようだから、次の世界へ行ってもらおう」

「だから、休暇! 準備期間と休暇をください!!」

「むぅ……ではまた2日後に」


神様の世界も働き方改革して欲しいものだ。あっ、より一層苦労しそう。やっぱ無しで。




2日後。

前触れもなくトイレから出た瞬間に飛ばされた。

トイレ後で良かったよ。トイレ前だったら……。


ってか、ここはどこですか?!

教会っぽい所の中ってのは分かるんですけど、若者と保護者?が沢山いるんですけど!

授業参観って雰囲気じゃないし。

そしてめっちゃ注目されてるし。


あっ、神官っぽい人みっけ。

やはりここは教会なのだろう。

そして俺は、不安定な足場の上に居る。ってか、足場と思ったら、なんかの神様っぽい像の上かよ! そりゃ不安定に決まってるわ。


いかん。乗ってる場所が場所だけに怒られそうだ。

何か言い訳をしなくては。

………………教会で、神像?の上。ならば神の使いって事で押し通そう。間違ってないしね。


「私は神の使い。神からのお告げをもってやってきた」


出来るだけ抑揚の無い喋り方で言ってみた。

頼むよ“ペテン師”の能力。この場にいる全員を納得させてくれ。


「か、神の使い……? 使徒様ですか? でも何故ヒャルト神像の上に……」

「ヒャルト? あぁ、この像の神の名前か。このような下級神の上に出ようが問題は無い」

「な、なんと……!!」


咄嗟の言い訳で下級神扱いしてしまった。

全知の神とか最高神って設定だったらどうしよう?


「で、では貴方様が使える神のお名前は……?」


本の神の名前? ……知らないな。

適当に付けたら怒られそうだし、ここは適当な事を言っておこう。


「下々のモノが神の名を知る必要はない……」

「し、失礼致しました!」


ごめんなさい、神官っぽい人。


「さて、神からのお告げを発表しようと思うが、多いので書物に記載してきた。

 内容を下々のモノにも分かるように考えてから告げるので、少々待つように」

「は、ははぁ!」


我ながら良い言い訳を思いついたと思う。こう言っておけば、アイテムボックスから本を取り出して読んでも問題無いだろう。

これでなんとかこの世界を知る事が出来そうだ。


早速本を取り出してパラパラと流し読みをする。



……なるほど。レビューした事ある作品だ。

15歳になると神から神器と呼ばれるモノを貰える、と。

主人公は、見た目がショボい上に誰も知らない神器だったから、貴族家を追放される。

主人公は前世の記憶があり、ここがゲームの世界で、貰ったモノが便利なモノだと知ってると。

追放を喜び、ダンジョンで村を作って農業して生活する話か。


結論! クソつまらん!! 以上! 解散!


なんじゃこの無茶苦茶な設定は。

これをどうにかしろって、無茶ですよ。世界が歪んでるもん。

でもやらなきゃ帰れないんでしょ? はいはい、やりますよ。


「うむ。理解した。では最初のお告げを。

 『お前ら、神を舐めてんのか?! バカにするなよ! 世界滅ぼすぞ!』だ」


「「「…………えーーーーっ?!」」」

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