003 ギルドの職員
結局、普通の事を教えるのに10日間もかかってしまった。
しかしその甲斐もあり、当たり前の事が当たり前だと理解してくれるようになった。
……この事自体が当たり前なんだけどな。
もう問題は無いだろうというタイミングで、唐突に世界が赤くなった。
まるで某FPSで撃たれた時みたいな感じ。
まさか、この世界の魔王が?!と思ったが、どうやらそう見えているのは俺だけのようでラースは平然としている。
何が起きたかを考える間も無く、俺は自宅の玄関に居た。
そして目の前には本の神様が。
「ご苦労」
「さっきのはもしかして強制転移ですか?!」
「そうだ。あの本での役目は終わったからな」
「そうかもしれないですけど、変な演出は止めてくださいよ。何事かと思うじゃないですか」
「予告も無く飛ぶ方が困るだろ?」
いや確かにそうですけども。
それならそれで、最初に教えておいて欲しかったです。
「では次の本に行ってもらおう」
「早い! 休憩をくださいよ! 実際には時間経過は無いかもしれませんけど、体感では10日経ってるんですよ?!」
「直さなければならない本が多いのだ!」
「せめて1日は休憩させてください! 後、色々と問題点というか必要な物とかも分かってきたので、準備期間を!」
「むむ…………しょうがあるまい。では2日後にまた来る」
助かった。
ラノベの世界は基本的に中世ヨーロッパ風なので、現代のキャンプ道具を持ち込みたいんだ。
キャンプをやった事が無いので、本当なら練習もしたい所だけど。
ところで神様、こういうのを買ったり飯買ったりするのって、現状自腹ですけども。
俺はボランティアですか? 報酬って無いんですか? ねぇ、神様?
2日後。
本当に神様が来た。前回と同じ時間ぴったりに。
「神様! 買い物は全部自腹なんですけど?! 報酬ください!!」
「そんな物渡せる訳無いだろ? 上位神にバレる!」
「え~、無償?! ボランティア?! そんなに良い稼ぎしてませんよ、俺。登録者数見たら分かるでしょ?」
「本の世界から金でも宝石でも持って帰って売れば良いだろ」
「日本はそういうの厳しいから! 最初は良くても継続的に出来ないから!」
「転移で海外に行き、そこで売れば良いだろ? 狙われても転移で逃げれば良い」
「今監視カメラとか一杯あるから! 突然転移なんかしたら、世界中で有名になりますよ?! その方が他の神にバレる確率高いですって!」
「むぅ……では報酬は考えておく。とりあえずは金の装飾品でも本の世界で買ってきて、買取業者にでも売ってろ」
ううむ、まぁ1回くらいなら祖母の遺品って事で誤魔化せるか?
あまりに高額だったら税務署に目をつけられるだろうけど。
確か金の場合は重量だったはずだ。軽そうな物を探すか。
ネットオークションに出せば足がつかないか? 現金取引すれば税務署も調べられないし……って転売ヤーみたいな事を考えてる!
うん、やはりちゃんと報酬をもらおう。
「納得したな。では行って来い」
「だから早いって! ちょっとま……」
はい、またラノベの世界に到着です。
今回は……酒場の中?!
こんな所にいきなり転移してきたら100%不審者でしょ!!
って、全然注目されてない。
というか認識出来て無いのか? 誰とも目が合わないし、誰もこっちを見ない。
どうなってるんだ、神様。相変わらず説明不足ですよ。
それに酒場の中じゃあ、誰が目的の人物か不明じゃないですか。
と思ったら、デカい声が聞こえてきた。
「何で俺がクビなんだよ!」
あ~、分かった。あれが主人公だな。
そうか、今回は追放系か。
どうやって介入しよう?
相手が一人なら「自分は神」って作戦が使えるが、今回は複数人だしなぁ。しかも観衆まで居る。
ここに居る全員が話を聞きそうな身分を詐称するのが一番だけど……。
「君たち、話は聞かせてもらった。自分はギルドの職員だ。詳しく話を聞かせてもらおうか」
シッチャカメッチャカな事を言ってしまった。
いや、言い訳させてもらうとさ、ギルドって組織があってそこに加入してるでしょ?
ただそれが冒険者なのか探索者なのか商人なのか傭兵なのか分からないから、ギルドだけ言ったんだよ。
話は聞かせてもらったと言いながら詳しい話を聞かせろってのは、自分でも意味不明だわ。
だが、相手は興奮してるのか、誰もそこにはツッコんでこなかった。ラッキー。
「ギルドの方ですか? でも見かけた事無いですけど……」
「自分は裏方でね。主に取引の纏めをやっているんだ。ほら、君達がギルドに売っている物があるだろ? あれを商人に売ったりするのが仕事なのだよ」
「そ、そうですよね。そりゃそういう人も居ますよね。失礼しました」
そんな事も考えてないのかよ。
ギルドも冒険者から買い上げるだけで販売しなきゃ大赤字だろうに。
まぁそんな所まで書いてる話って殆どないからな。作者が考えてない事はキャラも知らないか。
「で、何を揉めているんだ?」
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