第13話

「…で、どういうおつもりなんですかお嬢」


 生徒会室を出て開口一番、結城くんが問いかけてきた。少々鼻に触る言い方なところが気になるが、今は不問としておこう。

 

 生徒会長からの提案に私は無意識中に返答してしまっていた。自分でもなぜあそこであの言葉がついて出たのかはわからない。だが、これはチャンス。復讐が終わってしまった今、彼と私を繋ぐものはこれしかない。これに頼るしか無いのだ。


「…私、来年の生徒会選挙に出る予定なの。だから今の内に生徒会として活動しておいたほうが優位に立てるでしょ?」


「それと俺とになんの関係があるんだよ。俺まで巻き込むことねーだろ」


「あら、復讐を手伝ってあげた恩人に随分と生意気な口を利くのね?」


「はぁ?あれはお前が勝手に…」


「と・に・か・く、貴方には私のお手伝いとして生徒会で馬車馬のように働いてもらうわ。いい?」


「働くのはお前も一緒なんだが…」


 私はいつも通り棘のある言葉で自分の感情を濁す。そうしていないと、結城くんとはとてもじゃないが話せない。

 彼は一つ間をおいてからため息をついた。


「…分かったよ。助けてもらったのは事実だ。それに、今更断るわけにも行かないしな」


 結城くんはそう言うと肩を落とした。面倒事を避けたがる彼はきっとこのことを欲思っていない。彼がこの生徒会に参加することは私のエゴだ。それでも、


「せいぜい頑張ることね」


 私の返答を聞いて結城くんは手をひらひらと振ってとぼとぼと教室へと戻っていった。

 正直言って、私は彼の返答が怖かった。今回の件で悪いのは私の方だ。昔から私は彼の事を引っ掻き回してばかり。いつ見限られてもおかしくはなかった。それでも関係が続いていたのは彼の優しさあってこそ。彼の温情はいつだって私を助けてくれる。

 申し訳ないが、今回も彼の優しさにすがらせてもらうことになる。彼にとっていい迷惑だとは分かっている。それでも、まだ彼の隣にいさせて欲しい。我儘だと分かっていても、どうしても。

 なぜなら、私は強情で、難儀な女なのだ。




「全く、あの女は…」


 生徒会室からの帰り道。教室へ向かう廊下で俺は吐き捨てた。

 面倒事は避ける。それが俺の信条だ。わざわざ必要のない苦労をしてまで苦しむ必要などない。才能のあるやつは勝手に頑張ればいいし、そうでないやつはそれなりに過ごしていればいい。適材適所という言葉があるように、全員が全員頑張らなくてもいいのだ。


 それなのにあの女は俺の気など知らずに勝手に返答をしやがった。理由は来年の生徒会選挙に向けてだとか言っていたが、そこは俺じゃなくてもかわりの奴を探せばいいだろう。それなのになぜ俺を巻き込む。嫌がらせかなんかなのか?まったく、横暴なのは昔から変わってないな。もう少し大人しくなってくれてもいいんだが。


 それにしても、俺が生徒会か…らしくないことはするもんじゃない。性に合ってないのだから、無理にやったって長続きしない。そう思っていても、彼女という存在を放っておけない自分がいることに俺は目をそむけていた。


「あ!ユッキー!!!」


 …もっとめんどくさい奴が来たから一旦考えるのはここまでにしよう。

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