第26話 くのいち少女、その名はなずみ
「俺に弟子入り……だと!?」
森で襲ってきた少女が弟子入りを懇願するなどとは夢にも思わず、ザガートが困惑する。少女の申し出は
男には忍術の心得など全く無い。くノ一が魔王に弟子入りするなど、荒唐無稽にも
「何か理由があるのだろう……詳しく話せ。弟子にするかどうかの判断はそれからだ」
それでも即断したりはせず、気持ちを落ち着かせようとゴホンと
「オイラ、
少女は土下座をやめて顔を上げると、自らの素性について語りだす。
「オイラがいくら忍術を頑張っても、周囲は認めてくれなかったッス……女に頭目の
なずみと名乗る少女は
「こっちに渡ってきた時、とても強い魔王の
森に姿を現した事、魔王に戦いを挑んだ経緯について話す。スライムとは偶然出会っただけで、何の関係も無い事を明かす。
「改めてお願いするッス! どうか……どうかオイラを弟子にして下さい! オイラ、故郷のみんなをギャフンと言わせてやりたいッス! メチャクチャ強くなって、オイラを認めなかった事を後悔させて、見返してやりたいッス! その為に世界で一番強い師匠の弟子になって、実戦の経験を積めば、もっと強くなれるかもしれないと、そう思ったッス!!」
またも地に
少女の決意は固く、テコでも動こうとしない。男が首を縦に振らなければ、日が
(フーーム……)
なずみの話を聞いて、ザガートが深く考え込む。
(森での戦いぶり、なかなか見事だった……
先ほどの勝負を思い起こし、少女の
「俺の弟子になっても、忍術が上達するとは限らんぞ。それでも良ければ、好きにするがいい……」
そう言い終えると、
「好きにするがいい」……その言葉が付いてくる事を許可したものである事は、誰の目にも明らかだった。
「分かったッス! お言葉に甘えて、好きにさせてもらうッス! オイラ、何処までも師匠に付いていくッスよ!!」
男の心情を読み取り、なずみの表情が晴れやかになる。すぐさま土下座をやめて立ち上がると、嬉しそうに早足で駆けながら後を追う。飼い主に
「オイ、正気か!? いくら戦いの才能があるとはいえ、まだ十二歳の子供だぞ!!」
レジーナが慌てて横に並び歩きながら魔王に問い
「旅の仲間が何人増えようと、一向に構わん……本当に危険だと判断した時は俺が全力で守る」
ザガートが足を止めないまま王女に言葉を返す。か弱い少女を旅に動向させる事に少しも不安を抱かない。仲間の命を守る自信に満ち
「全く、お前らしい答えというか……」
王女が
普通ならば、守るべき対象が増えれば増えるほどピンチに
(……新しい女が増えた)
またも一行に女性メンバーが加わった事に、ルシルが内心不満を抱く。
超絶イケメンである魔王が着々とハーレムを築くのを仕方のない事だと割り切りつつも、どんどん自分が構われなくなるのではないかと不安になり、心がモヤモヤする。
けれどもそれを口には出せず、顔をむくれさせたまま黙って三人の後に付いていくのだった。
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