第6話結美様、世界最強種族ドラゴンに勝利!?

「グオオオーーーー!」

ドラゴンは雄叫びを挙げ、口から炎の息吹を放った。

「きゃー!何してんのよ!!」

辺り一帯は、焼け野原と化してしまった。


次の瞬間、赤い腕が顔を掠める。


「痛―――」

ドラゴンは次々と攻撃を仕掛けてくる。

右、左、右、屈んで‥ジャンプ!

「あっぶねー!生きてるわぁ!」

奇跡的に全て避けきることができた。ユーミの身体能力のお陰かしら?


「グオオオー!」

ドラゴンが3度目の雄叫びをあげる。

「あなた、さっきから本当にうるさいわね。叫ぶんじゃなくて言葉で話なさいよ。さっき普通に話してたじゃない」

「先程から生意気な小娘だ。私たちドラゴンは世界最強種族。お前のような小娘が舐めた口を聞いて良い相手では‥」

「は?待って、顔から血出てるんだけど。あんたのせいよ!どうしてくれんのよ!?」

「いや、最後まで話を‥」

「黙れボケドラゴン!乙女の顔に傷をつけて、どうしてくれんのかって言ってんのよ!」                                              

「醜女の小娘が何を‥」

ドラゴンの顔の高さまでジャンプして、左足で蹴飛ばした。

ドラゴンの巨体は地面へ叩きつけられる。

すかさず炎の息吹を放とうとするドラゴンの口に、左足がクリーンヒッ卜。

地面にめり込んでいるドラゴンに近寄り、見下ろす。

「弱すぎてびーっくりしちゃった!あんなに偉そうに世界最強種族とか言ってたくせに。ていうことで、この裕美様が世界最強って理解したわね?」

「ぐううっ‥」

ドラゴンは苦しそうに呻きながら、反抗的な視線を投げつけてきた。

「分かったわよね!?」

右手を勢いよく振りかぶりつつ、腹から声を出す。

「わ、分かった‥」

「ごめんなさいは?言いがかりつけて、私の外見を侮辱したこと。そして、いきなり暴力を振るおうとしたことを謝罪しなさい!そんで、顔の傷!どうしてくれるのよ!」


右手をそのままに、更にドラゴンに詰め寄る。

「す、すみませんでした‥。前後撤回します、美しいです‥。顔の傷は元通りにします‥」

すっごい悔しそうな顔ね。

裕美様に言いがかりをつけた挙げ句、喧嘩売るからよ。


「顔の傷、早く治しなさい」


ドラゴンはユーミの顔に手をかざした。

「大地の精霊よ、汝の傷を癒しなさい」

ドラゴンが呟くと、手のひらからスパッーと光が出てきた。



「‥治りました」

「ほんとに?今ので治ったの?」

「はい。そうです。これ鏡です。どうぞ」


案外しごできドラゴンじゃない?てか、どっから鏡出してくんのよ。

「たしかに治ってるわね。傷跡もなし」

「はい。完璧に治癒しました。どうですか?」

「まあ今回は大目に見てあげるわ。ただし、次はないわよ」

ギロリと睨むと、ドラゴンは息を呑む。

「はい、分かりました。ありがとうございます」

「それにしても貴方弱いわね、本当にドラゴンなの?」

「私はバズールと言います。正真正銘、ドラゴンです」

へーそうなんだ。ユーミってまじで強いのね。

「私バズールは、貴方様に忠誠を尽くすことをここに誓います。貴方様にお仕えすることをお許しいただけませんか」

「忠誠?んー今のところ、ドラゴンを飼う予定はないのよ。ごめん」

バズールは悲しそうな顔をして、黙り込んでしまった。

でかい図体して、捨て犬みたいな顔しないでよ‥。

「はー分かりました。忠誠とかはいいから、私の友達になってちょうだい」

「トモダチ‥」

「嫌ならいいのよ」


このドラゴンむかつくわ。なんで戸惑ってんのよ!

「いえ‥光栄なお話です」

バズールはペコリとお辞儀をする。

‥まあいいわ。

一応、世界最強種族らしいし、味方が多いことに越したことはないわ。

「そう。私はユーミよ。バズール、これからよろしく。それで早速なんだけど、私元々この世界の住人じゃないのよ。」

「えっと‥。もう一度、お願いします‥」

鳩が豆鉄砲を食ったようね。鳩じゃなくてドラゴンなんだけど。

「私、元々この世界の住人じゃないの。目が覚めたらこの姿でこの世界に居たってだけで、違う世界から来たみたいなの」

バズールは余計に混乱した様子だ。当然、なに言ってんだこいつって感じよね。

「んーとね‥」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る