10-9
「諸島で一番幸せな男になるんですね」
レアカは、北の海を見ながらつぶやいた。
あれから、二年の月日が流れている。外界から人々が来て、海竜に襲われて、内乱が起きた日々から。今でも海竜は封印されたままで、四代クドルケッド王は実権を取り戻している。
レアカはサ・ソデ島で、祈り部を続けていた。一度も島を出てはいない。
そして、英雄となった若者のことはずっと忘れていない。
「まあ、この予言は、私も予想できていたのだけれど」
小さく笑った後、レアカは目を閉じた。
「ルハ、ルハ!」
大きな声を上げながら、テレプが駆けてくる。衣服を洗っているところだったルハは、顔を上げることもない。
「うるさいぞ」
「うるさくもなるさ! ついに王宮付きの魔法使いになるんだ!」
「……そうか」
「喜んでくれないの?」
「ルイテルドに行くんだろう。素晴らしい出世だ。おめでとう」
ルハは顔を上げた。テレプの満面の笑みが目に入った。
「そうさ。君のために、君と一緒に暮らすために、出世したんだ。ついてきてよ、ルハ」
ルハは、下唇を突き出した。
「諸島を救った英雄なんだぞ。いくらでも縁談がある。アタシなんかにかける言葉じゃないだろう」
「何言ってるんだ。君ほど美しい人は他にいない。君にかけるべき言葉はいくつあっても足りないよ」
「まだそんなこと言ってやがる」
テレプは、ルハに手を差し出した。ルハは、その手を強く握った。
「幸せにしねえと許さないからな」
「ああ、もちろんするさ」
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