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「本当に来た」

 テレプは、サ・ソデ島から来た兵団を見てあっけに取られていた。

 サ・ソデ島から助けが来ると言ったのは、はったりだった。彼には、それだけの政治的な力はなかった。しかしサ・ソデ島には、優秀な祈り部、予言者がいたのだ。政治的混乱と竜の撤退は事前に言い当てられ、いつでも援軍できるよう準備が整えられていた。

 レ・ペテ島の不審な動きを察知して、デギストリア島も警戒していた。そのため、サ・ソデ島からの協力要請にも素早く応えられたのである。

 レ・クテ島に到着した二島の軍に対して、サ・ソデ軍は警戒しながらの進軍となってしまった。ルイテルド島に入れるかも不透明で、サ・ソデ軍の状況は思わしくなかった。

 五代クドルケッド王にとっては、大きな誤算だった。港が解放されないうちに、ルイテルド島の全権を掌握するつもりだったのである。しかし第一王子側の抵抗も激しく、敵勢力をつぶさないうちに全島で竜たちが身を引いてしまった。海竜が封印されてしまったことも伝わり、良いことは何もなかった。

 サ・ソデ軍はレ・クテ島への強制上陸を試みるが、連合軍に阻止される。

 テレプは、生まれて初めて戦争の様子を目の当たりにして、おおいに驚いていた。諸島の運命を変えるかもしれない戦いだが、淡々と進んでいく。そして多くの人々にとって、展開は予想できるものだった。スド・ルイテルドを海側から包囲されるに至り、五代クドルケッド王は敗北を受け入れた。

 各島の代表が集まって今後のことについて話し合いが行われるらしいが、テレプには興味のないことだった。彼は、ルイテルド島に渡った。



 ルハは、穴に土を埋めていた。

 ぎゅっと唇を噛んで、涙がこぼれないように目に力を入れていた。

 足音が聞こえた。これまで、わざわざ訪れる者などめったにいなかった。盗みに来たとしても、めぼしいものなどほとんどない。

 振り向くと、見知った顔があった。ただ、知っている顔よりも幾分大人になっている気がした。

「テレプ」

 ルハは、笑っているようにも、怒っているようにも見えない。悲しみの表情に、テレプは戸惑った。

「久しぶりだね。迎えに来たよ」

「テレプ。いいタイミング過ぎるな。嘘みたいだ。アタシは今、一人ぼっちになったところだったんだ」

 そう言ってルハは、地面を見る。

「そうか。世話になっていた人?」

「ああ。いい人だった」

「僕も手伝うよ。その人の話を聞かせて」

「面白くはねえぞ」

「いいよ」

 二人は並んで、墓を整えていった。

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