8-9
「全く騒がしい」
吐き捨てるようにルハは言った。
王の弟と王子の争いは、ルイテルド島全土を巻き込むものになっている。各村で小競り合いが起き、物資の奪い合いとなっている。どちらにつくかで揉めて、親戚同士で仲たがいするところも出てきている。
ルハもテオトラも、政争に興味はない。だが、普通に暮らしていくうえでも無関係ではいられないのである。スド・ルイテルドとしては王弟につくらしく、王子派の村とは交流を断っている。
皆が、次の王は誰かと考え始めている。
「レ・クテ島に四代クドルケッド王の旗が立ったらしいぞ!」
誰かの声が響いた。ついに塔が完成し、ルイテルド島からもその姿が確認できるようになったのである。
「……騒がしいなあ」
重ねて、ルハは言った。
「……竜だ」
スタンティムが言った。
「大人しそうですね」
テレプもその竜の姿を確認した。
二人がデギストリア島の森に入り、三日が経つ。追っ手がいないのか森が深いのか、全く誰にも出会っていなかった。
「今まで見たのと様子が違うな」
「やはり禁魔が影響しているのでしょうか」
竜は二人の方を一瞥したが、すぐに興味を失った。のそりのそりと歩いている。
「竜は魔法的存在なのではないか、と少し思っていた。ナトゥラ諸島の魔法が育んだ、特別な生き物なのではないかと。しかし、そうでもないようだな」
「それはわかりません。元々はそうだったのかもしれませんし」
竜は、ゆっくりとその場を去っていった。
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