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「で、この後はどうするんだ」

 東から日が差し始め、周囲がはっきりと見えるようになった。スタンティムは、テレプの顔を見つめて尋ねる。

「え」

「え、って。俺たちは追われる身になったぞ。島の中では魔法もままならない。どうするんだ」

「浜はあそこしか無さそうですし、見張られていますしね。海竜の方から来てくれればいいんですが」

「まさか考えてなかったのか?」

「今すべきことは……あれを自分のものにすることだと思います」

 スタンティムは目をきょろきょろさせた。

「あれ?」

「禁魔の魔法です」

「は?」

「あれを模倣します。部分的に」

 海鳥が鳴いた。ネズミの走る足音が響く。

「模倣? 本気か? 命を賭した大魔法だぞ。お前一人でどうにかなるものか。だいたい魔法の習得は……」

「――」

「――!」

 テレプが発した声に、スタンティムは激しく動揺した。瞳孔は開き、両手が細かく震えている。

「あなたの魔法を模倣しました。言葉が通じたはずです」

「これは俺に先天的なものだぞ。しかもお前に手ほどきをしたわけでもない」

「ずっと一緒にいたんですよ。かなり見させてもらいました」

「……生きていれば、お前は確実に伝承に残るだろうよ。ただ、あのウロ集合のは比べ物にならないやばさだと思うが」

「レテの流れを覚えます。これを応用すればいいはず」

 スタンティムはすっかりあきれ果てて、大げさに苦笑した。



「こんな原始的方法にたどり着くとはな」

 四代クドルケッド王は、組み上げられていく塔を見ながら言った。

 丸太を運んでくる人々。そしてそれを組んでいく人々。見張り台よりも高く、ナトゥラ諸島にかつてないほどの高さを目指して塔が作られていく。

「作業は順調であります」 

 答えた建築作業の担当者は、緊張で動きがガチガチだった。王宮付きの大工はルイテルド島にいるため、レ・クテ島で一番設計が上手いと噂の男が呼ばれたのだ。ごく一般的な諸島民であり、普通ならば王の影すら見られる立場ではない。

「昔は各地にこのような塔があったと聞く。その造り方も残っているものか」

「ええ、よく聞きました。まさか本当に造ることになるとは思いませんでした」

 争いが絶えなかった頃は、様々な理由で塔が建てられた。その土地を支配したことを示すため。支配者が高い場所から顔を見せるため。雨ごいをするため。そして、旗を立てるためである。

 一度は建設が禁止された塔であったが、王はレ・クテ島に建てることを決意した。王の旗を立て、王が健在であること、そして四代クドルケッド王が正統な王であることを示すためである。

「できればこういうことはしたくなかったんだがなあ」

 王は一度肩を落としたのち、姿勢を正して塔が完成するはずの空を眺めた。

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