6-9

「嵐が来そう」

 レアカが言った。

「それは予言ですか?」

 テレプが尋ねた。

「海の様子を見ればわかるかな」

 二人は籠を編んでいた。テレプがレアカに作り方を教えていた。

「意外とそういうのは苦手なんだ。得意そうなのに」

「あら、ばれちゃった」

 嵐が来る。そうなれば漁もできないし、家の外に出ることもままならない。家が壊れればすぐに修理をしなければならないし、崖が崩れれば避難しなければならない。

 予定などたたない。ひたすら耐える時間である。

「嵐はどうしようもない。でも……」

 テレプはそわそわしている。ここにいない誰かのことを想っているのだ。

 レアカはちいさくふっと笑って、編みかけの籠を置いて立ち上がった。

「嵐が来る前に色々と準備をしなくては」

「手伝うよ」

「テレプは、その籠を編み上げて。今からするのは、村の仕事だから」

 レアカは部屋を出て行った。テレプは籠を編み続けた。


 



 






 

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