6-8
東からやってきた人々は最初、ナトゥラ諸島の一番南の島、サ・ソデ島を発見した。彼らは長い航海の末に新しい土地を見つけ、大変歓喜した。
しかし、その島にはすでに竜がおり、人間たちを攻撃した。その時具体的にどのような手段で竜が攻撃したかはまでは伝えられていない。
住む場所を探して人々がたどり着いたのは、ルイテルド島である。そこにも竜はいたが、なぜか人間たちを攻撃しなかった。竜と人間は、できるだけお互いが干渉しないようには共存したのである。このようにして、しばらくはルイテルド島だけがナトゥラ諸島での人間の居場所となった。
何十年かそのような状態が続いたが、傷ついた竜を人間が助けたことにより竜たちの態度が変わったとされる。ルイテルド島以外に人間が住むことを許した竜とそうではない竜の間で争いがおき、人々も巻き込んで騒乱になったという。(このことから、人間と竜の間で言葉が交わされていたのではないか? と推測する者もいる)
この騒乱を収めたのが英雄カルゲ・アス・メテイド、ナトゥラ諸島の初代王である。人間と竜とのかかわり方を決め、人間が住むべき五つの島も指定した。このとき五つの島から去った竜もいるとされる。その竜たちは無人島に渡ったと言われているが、海に入って海竜になった可能性も考えられる。
五島に住む竜は、比較的人間と友好的だった。しかし無人島の竜は、時に人間を攻撃したいう。(勝手に無人島に渡った者は口をつぐむため、詳細はわからない)
「ふう」
四代クドルケッド王は、深い息を吐いた。伝承をまとめ直させたものを、何回も唱えて確認していたのである。
王は歴史を学ぶ必要があるが、どの王もが熱心に学んできたわけではない。語り部たちに任せておけば、伝承は途切れない。しかし王自身が歴史を知らなければ、「今と未来」を語れないと四代クドルケッド王は考えていた。そして「今」は、過去の歴史を変えていく。
海竜の出現によって、ナトゥラ諸島の歴史は書き換えられていった。海に逃れた竜のいる可能性は増し、人間に友好的でない竜の存在も確信できるようになった。それは、未来に生かしていくべき知識である。
「闇のお方」とも呼ばれる王にとって、学ぶことこそが王たることの証明につながるものだった。外に出ないで、うちでも何もしないのはただの怠慢である。そして非常事態である今こそ、光の下で威厳を示す王の方が人々を安心させるだろう。しかし本当に求められるのは冷静と明晰であると、自分のような人間であると王は自覚していた。
望んでそうしたいわけではない。ただ、そうするのが使命だと感じている。
「今一度、人間と竜の関係を築かないといけないなあ」
そう言うと王は、机の上の石をさわった。諸島の島々の位置にある複数の石。その中の一つ、黒く輝く石は、禁魔の土地デギストリア島にある。
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