6-4

「俺が魔法使い、だと?」

 スタンティムは、ねっとりとした視線でテレプをにらんだ。

「明白です」

 二人の視線がぶつかった。テレプの方が、鋭い視線だった。スタンティムが目をそらした。

「いつ、わかった?」

「結構最初に」

「まいったな。お前はやばい魔法使いだ」

 スタンティムは首を振った。

「そうありたいものです。もう隠す必要はありませんからね。堂々と手伝ってください」

「俺はお前と違って、役に立つために魔法を学んだわけじゃない。期待されても困る」

「僕だってどこまでできるかわかりません。やれることをやるんです」

「まったく、若者は前向きだ」

 スタンティムはそう言いながら、小さく何度も頷いた。秘密を隠す必要がなくなり、少し気は楽になっていた。



「あんたもう、ここで暮らすんだな」

 ルイテルド島の港、スド・ルイテルド近くにある小さな家。そこの家主である年配女性が、ルハに語り掛けていた。

「いやだ」

 ルハは、首を横に振った。

 その女性の名は、テオトラという。家族はいない。

 スド・ルイテルドに縁のないルハは、「荷物でなくなった」時点で居場所を失った。そんな彼女を迎え入れると言ったのは、テオトラ一人だけだった。

「そうは言っても、島を渡れないじゃないか」

「永遠じゃない」

「それはそうだろうけども。レ・クテ島には、家族がいるんだね」

「もちろんいる。それだけじゃない、本当に帰りたい」

「そうだろうとも。ただ、今はおとなしくここにいるんだね」

 テオトラは大人になってから、ずっと一人だった。それは、彼女自身のせいではない。彼女の父が、人を殺したのである。ナトゥラ諸島では、罪人の家族は新しい家族を持てない。テオトラは、これからも夫と子供を持てないという決まりの下で生きていかなくてはならないのだ。

 そんな彼女にとって、縁がないからこそルハは「共に暮らすことが許される」のだった。

「アタシは、大人しくするのは苦手だ」

「そうだろうともそうだろうとも。だが、竜を投げ飛ばそうとしちゃいけないよ」

「でるもんならやってやる」

 ルハは腕をぶんぶんと振り回して見せた。

 





 







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