5-9
「ここが、『聡明なる星』の墓標です」
テレプとスタンティムは、村人の一人によって高台にあるこんもりとした土の山を案内されていた。そこには特に供え物があるわけでもなく、ひっそりとたたずんでいる。
「思っていたよりも地味ですね」
テレプは、竜の像でもあるのではないかと予想していた。
「確かに聡明なる星は偉大な竜ではあったのでしょう。しかし常に我々の味方というわけではありませんでした。最初はわれわれを追い出したのも竜であり、われわれに住みやすい土地を与えなかったのも竜なのです。竜に対する思いは、複雑なのです」
「それでも、墓は作ったわけだ」
スタンティムにとって、竜の存在は謎だらけである。諸島の人々は竜を敬っているようで、畏れているようで、嫌ってもいる。
「そういうものです。たぶん」
「そういうものか」
その時、海の方から大きな音が響いた。波を打ち付ける音。三人が慌てて下の方を見ると、そこには海竜がいた。
「ついに来た」
テレプは、その姿を凝視した。多くの人を、ルハを殺したのかもしれない竜の姿を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます