5-7

「――を、臨時レ・クテ島主とする」

 族長たちの前で、四代クドルケッドが高らかに宣言した。

 ルイテルド島主が行方不明となり、代行が渡ってくることもできない。そんな中王は、レ・クテ島主を復活させることにした。王は腹をくくり、レ・クテ島でできる限りのことをしようと決意したのである。

 残された魔法使いや長老たちに、何とか島を出る方法がないかを探らせてもいる。ナトゥラ諸島には、竜と戦ってきた歴史がある。その中に示唆がないかを考えさせてもいる。

「ありがたくお引き受けいたします」

 反乱以来約250年ぶりに、レ・クテ島はルイテルド島の支配下から脱した。しかし今は、竜に囚われている。

「この困難を切り抜けてこそ、レ・クテ島、そして諸島の繁栄はあろう。よろしく頼むぞ」

 そう言った後、これでいいのだろうか、と王は不安になった。これまで助言してくれた者たちはほとんど、竜の魔法で飛ばされたか、ルイテルド島に閉じ込められているかである。孤独な決断だった。これからもそうだろう。

 任命式を終えた王は、しばらく目を閉じていた。瞼の内側には、幼い頃の光景がよみがえっている。懐かしいものの、たいして楽しくもなかったな、と王は思っていた。



「私がご案内しましょう」

 テレプが魔法の鍛錬をしたいと申し出ると、ふさわしい場所までの案内役をレアカが申し出た。

「いいんですか」

「私はそんなたいそうな者ではありません。祈り部をしているだけの女です。何でも遠慮せずに頼んでください」

「では、よろしくお願いします」

 テレプは、レアカの後をついて村からさらに高いところへと歩いていった。うなじやふくらはぎに見とれることもあったが、険しい道に足を取られないようにほどほどにしなければならなかった。

「ここはどうでしょうか」

 そこは景色の良い、海を見渡すことができる開けた場所だった。

「とても良いです。デギストリア島は見えますか?」

「ここからは見えませんね。方角としては、あちらになります」

 レアカの指さす方には、木々がうっそうと茂っていた。

「行ったことはありますか?」

「いいえ。ほとんどの者は、一生を島の中だけで終えます。行きたいと願ったこともありませんが。あなたのようにいくつもの島に行く人はかなり珍しいと思いますよ」

「まあ、成り行きなんだですけど」

「リンデリンデ島にも行ったとおっしゃっていましたね」

「ええ。美しい、三日月を二つ重ねたような島でした。ただ、僕たちはそこで飢えと渇きの恐怖に襲われていました」

「大変でしたね。ですが、あなたたちが助かることも決まっていたのですよ」

「……不思議なことです」

 テレプは、レアカの顔をじっと見ていた。青年が微笑んだのがえくぼを見たからだということは、信託が伝えていなかったので、レアカはわかっていなかった。

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