5-2
「逃げましょうか」
テレプの言葉に、スタンティムは目を丸くした。時間は夜。そろそろ寝ようかとしていたところである。
「お前、意外と大胆なことを言うやつだな」
「ここは、魔法防御はかけられていますが、作りが甘いです。衛兵も外で眠っているようです。僕らはそれほど厳重に捕らえられているわけではないということですね」
「それも探っていたのか」
「もちろんです」
テレプは目を閉じて、右手を部屋の角に向けた。黒い光がまっすぐに放たれ、壁に大きな穴を開けた。
「そんなに簡単に?」
「あそこの防御が薄かったんです。それを探るのは簡単ではありませんでした。あと、どれだけ静かにできるかを考えるのも。兵士が起きたら面倒です、行きましょう」
「ふっ。これでお前も犯罪者だな」
「他島の人間を監禁した方が悪いんじゃないですか? まあ、善悪はこの際、忘れておきましょう」
「なかなかの悪党だ」
二人は、世闇へと駆けて行った。
「どういうことだ、ダイヤモンド鉱山から追い出されるというのは」
島主はいら立っていた。どのようにして反乱を起こすのか考えていたところに、竜が鉱山から人々を追い出したとの報が入った。ダイヤモンドが取れなければ、計画の根底が揺らいでしまう。
「一次的なものではあると思うのですが……」
「いいや、これは竜たちの報復だ。元々宝石を守っていた竜が死んだところに、われわれが運よく入っていったのだ。竜が守る宝だったのだろう。だが、竜に遠慮ばかりすることはない。これを奪還して……」
「島主、失礼します! あの二人が逃げたとの報せが!」
「……なんだと」
島主のいら立ちは、頂点に達することになる。
「これからどうするんだ」
「デギストリア島に渡ります」
「どういう島なんだ」
「禁魔の島です。魔法を使ってはいけません」
「そんな島、お前にとってはよくないんじゃないか?」
「使っちゃえばいいんですよ」
スタンティムはあきれたように笑いながら、船を漕いでいた。近くの浜で奪ったものである。テレプは魔法で、風を呼んでいる。
「かなりの悪党だな」
「あの土地では、魔法を使わないことによりレテが溜まっています。より強大な魔法を使うのに適しているんです」
「強大な?」
「海竜に対抗する魔法です」
「お前、あれと戦うつもりなのか?」
「必要とあらば」
「覚悟のしすぎじゃないか」
「そうかもしれませんね」
すでに追っ手も海に出ていたが、魔法で加速する逃亡者の船には追いつくことができなかった。
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