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 レ・ペテ島主のもとに、島の族長たちが集まっていた。島主も宴に誘われていたのだが、参加していなかった。異邦人たちとのつながりを持ちたい、という思いを優先しなかったのである。

「これは好機である」

 島主は力強く言った。熱のこもった声だった。

「どうなさるのですか」

「王とルイテルド島・レ・クテ島は今混乱している。力も削がれた。われわれにはダイヤモンドがある。独立すれば、献上する必要はない。異邦人が来たことも好都合だ。いざとなったら、諸島外とも取引できることがわかった」

「本当に独立、できますか」

「それを今から検討せねばならん」

「あの漂着した二人はどうしますか」

「人質として役に立つとは思えんが、殺すにはまだ早い。特にあのスタンティムとやらは様々な情報を持っておる」



「はあ」

 テレプは一度、魔法を止めた。島主たちの会話を聞くのはとても疲れる作業だった。

 レ・ペテ島の独立戦争が起こるかもしれない。それは、あり得ないこととは思わなかった。

 レ・クテ島がルイテルド島の支配下になったのも、デギストリア島が禁魔の地となったのも、反乱が原因である。伝承を聞いていなくとも、諸島民ならば誰もが知っていることである。

 レ・ペテ島は最も反乱の力がないようでいて、反乱の理由がある島だった。有人島の中では最も小さく、土地が瘦せており、良い漁場があるわけでもない。そのうえ多くの税を取られ、ずっと蔑ろにされてきた。歴史的に人々の不満は溜まっていたのである。

 ダイヤモンドの発見により貧しさは改善されつつあったが、「宝石を献上させられている」という意識も強くある。現状、レ・ペテ島のダイヤモンドを島民はほとんど所持できていない。島民は一切の販売権を持っていないし、隠し持っているのがわかれば罪に問われる。

 島で採れたものを、島で保持できない。レ・ペテ島民はそれを屈辱ととらえていたのである。

「どうだった」

「予想よりも大変なことになりそうです」

「そうなのか。運よく島にたどり着いて、運よく救助されたと思ったんだが、そんなに都合の良いことばかりではないか」

「海竜に遭遇することが充分運が悪かったですね。あんな災厄みたいな存在に出会うことはなかなかないですよ。まあ、あなたにとっては自業自得かもしれませんが」

「俺は何もしていない。いや、通訳というのは言い訳の効かん存在かもしれんな」

「通訳というのがどういう存在か僕はよくわかりませんが……そう言うならば、そうなのでしょう」

 二人とも、腕を組んで唇を噛んだ。

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