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「なんか、新しい家が多くないか」

 村を見渡しながら、スタンティムは言った。

「そうですね。潤っているのでしょう。農作物がよく採れたのかな?」

 テレプはそ知らぬふりをした。実際のところ、レ・ペテ島を訪れたのは初めてであり、彼もその様子に驚いていた。ただ、予測のつく状況ではあったのだ。

 ダイヤモンド献上による減税で、島は一気に活気づいた。急に裕福になった者は、それを目に見える形で反映させたがる。

「そのような土地には見えないな。何か鉱物でも採れるのだろうか」

「スタンティム……僕はあなたを信用していません」

「どうしたんだ、急にそんなことを」

「あなたたちはここに何をしに来たのか。来訪神と呼ばれることで、あまり疑われずに済んだしょう。ただ、実際はどうなんでしょう。冨を求めに? それとも侵略の下見に?」

「運命共同体と言ったのはお前だぞ」

「ここに来て、あなたと運命を共にいる必要はありません。僕は諸島の人間で、あなたは違う。それに、もしあなたと助け合うならば、正体を知る必要があります」

「……まだ、僅かばかりこちらにも希望がある。俺たちと同様皆どこかで助かっているならば、俺たちはまだ目的を果たせるかもしれない。だから……明かすわけにはいかない」

「いいんですか。あなたを手助けする理由はなくなるかもしれませんよ」

「覚悟の上だ。一人で故郷を離れた時から、ずっと」

 スタンティムは、海の向こう、遠いどこかを見つめていた。



「スド・ルイテルドからの連絡が途絶えた?」

 四代クドルケット王は尋ねた。

「はい。ルイテルド島からは一切の連絡がありません」

 ルイテルド島主の従者が答える。

 ルイテルド島とレ・クテ島は非常に距離が近い。伝令役はそれほど時間をかけずに海を渡ることができる。何かあればすぐに連絡するようになっているが、それがないということはかなりの異常事態である。

「引き続き浜辺を警戒するように。他の島からの伝令もすぐに受け入れられるよう備えよ」

「はい」

 従者が部屋を出ると、一人になった王は大きなため息をついた。

 レ・クテ島も治めるルイテルドの島主は、海竜の魔法によって行方不明である。王の従者も、何人かの従者も、直属の魔法使いもいなくなった。頼れる者がいない中、王は一人「王として」振舞わなければならない。

「やめてえな。王やめてえ」

 四代クドルケット王は、元々王位を継ぐはずではなかった。優秀な兄がおり、父もずっと健康だったのである。そんな二人が相次いで流行り病いで亡くなり、急遽彼が戴冠することになった。

 やめられるものならば、いつでも王であることをやめたかった。

 しかも今いるのは、住み慣れた王宮でもなければ、ルイテルド島ですらない。そんなところで一人きり、心を落ち着かせる要素がないのである。

 伝承を信じるならば、これまで海竜と対峙した王はいない。五つの島に人々が住むことになった後に、カルゲ・アス・メテイド王がナトゥラ最初の王となった。竜に全ての島での居住を許された後に、ナトゥラの国としての歴史は始まったのである。

 それからずっと、海竜は潜伏していたというのか。

 ナトゥラ諸島に最初に来た人々は、どれだけ苦労したというのか。あんな怪物相手に戦っていたとしたら、なんと偉大なことだろうか。

 考えるほどに、憂鬱になっていく。四代クドルケッドは、苦悩に満ちた表情を崩せなくなっていた。

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