宝石の島

4-1

 かつて人々は長い航海をした。あまりにも長かったので、どこにもたどり着かないかと思った。

 しかし彼らは、島々を発見した。それらは「彼方ナトゥラ」と呼ばれた。人々は歓喜したが、そこには竜がいた。ルイテルド島以外の竜は、人々を追い払った。人々は必然として、最初ルイテルド島のみに住むことになる。

 ルイテルド島の竜は、人間を攻撃しなかった。それは、許すということだった。

 後に、他の島々でも人間は許された。ナトゥラでは、五つの島に人間は住むことになったのである。



 詳しく伝承を聞くのは王の務めである。四代クドルケッド王は、これまで聞いたナトゥラの歴史を振り返っていた。

 人々が移住してきた当初竜が何を思っていたのかはわからないし、具体的にどのように「追い払った」のかは伝えられていない。しかし海竜の所業により、推測ができるようになった。

 竜は言葉を使い、魔法も使う。

 それは驚くべきことだったが、あるいは、当然なのかもしれない。人間の方がそれらを学んだとしたら。

 海竜の圧倒的な力を目の前にして、王はそう考えていた。全ては竜から始まり、人々はただ許される範囲で生きてきたにすぎないのではないか。そうだとすれば、騒動を嫌がって人間を排除しようとするのもわかる。竜は、ただ安寧のために動いただけなのかもしれない。

 残された宴の料理と飲み物を少し口にした後、王は歩き始めた。



「少女はどうしましたか」

「なんのことだ」

 日も落ち、あたりは暗くなっている。テレプとスタンティムは、砂浜に寝そべっていた。と言っても、リンデリンデ島はほとんどが砂浜である。

「綺麗で元気な女性です。あなたたちと共に旅立つことになっていた」

「いたかもしれない」

 スタンティムはあまり興味がなさそうだった。

「もう船に乗っていたのですか」

「わからない。ただ、俺たちの出発は明日の予定だった。船はまだ港に停泊させて、荷物を入れる途中だった。人間は最後に乗り込むんじゃないか」

「だとしたらルハは……」

「ルハと言うのか。ある意味、海竜がいなければ永遠の別れだったわけだ」

 スタンティムはちらりとテレプの方を見た。

「島に誰が生き残っているのかもわかりません。あのあと海竜がどう行動したのか……」

「希望を優先した方が気が楽じゃないか? 絶望は後回しにすればいい」

「……そうですね」

 テレプは、両手で頬を叩いた。見上げる空には、星々が散らばっていた。あまりいい並びではないな、と思った。

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