2-9
竜は、長い間ナトゥラ諸島で生きてきた。人間が訪れる、ずっと前から。
彼らは本来好戦的な生き物だ。多くの地域で、他の生物たちと争ってきた。だが、海の真ん中の島々には、彼らの敵はいなかったのである。
竜たちは神をも恐れぬ態度で島々に君臨する。だが、諸島は狭い。神は告げた。「知恵ある者たちが訪れる。共に暮らすように」そして訪れたのが船に乗った人間たちである。
と、伝承には残っている。人々が竜のいる島に訪れたのであり、竜がいるのは当たり前だった。
諸島の人々は外海にどんな島があるのか知らなかったし、そこに竜がいるかどうかなど考えもしなかった。かつて西の地から漂着した者たちが竜を見てどう思ったのかは伝わっていない。西の地に竜がいるのかどうかはわからないのである。
来訪神によれば、東の地には、竜はいないという。それを信じる者も信じない者もいた。
竜は、人間に興味がないかのように暮らしている。だが、人間の方が興味を持てば竜も対応せざるを得ない。
テレプは確信した。竜だけが住む島に、立ち入ろうとする者がいたのだ。
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