2-4

「もし、攻撃されたら」

 魔法使いたちが、村の広場に集っていた。星の明るい夜。

「あの魔法は強いだろう」

「しかし、あの人数ですよ」

「手薄な村や島から狙うという手もある」

「相手は神ですよ。そんな滅多なことは……」

「本当にそうなのか? 証拠を見たわけではない」

「何が証拠になるのだ」

 魔法使いたちは、他の者たちほど「来訪神が来訪神であること」を信じていなかった。見た目だけでは物事を判断しない力を備えていたのである。

「今のところわれわれに危害を加えていないのは確かだ。敵対する必要はあるまい」

「しかし気になることも言っていたようだ。竜をなぜ使わないのか、と」

「竜を使う?」

「竜の鱗や骨、歯を使えば立派な武器や道具、装飾品が作れるはずだと。彼らの島には、竜がいないらしい」

「竜を他の鳥や魚と同じだと思っているのか? 恐ろしい」

「想像以上に、異なる暮らしを持っているのだろう」

 皆の話を聞きながら、テレプは遠い土地のことを想像した。島の大きさはどれぐらいだろうか。どんな鳥がいるだろうか。どんな魚が泳いでいるだろうか。

「テレプ、お前はどう思うんだ」

「え、はい。とても興味があります」

「何の話だ。まじめに聞け」

「申し訳ありません……」

 話し合いは終わらない。星もずっと瞬いている。



「漁に行かないか」

 朝、テレプは目をこすりながら修業のため丘に向かおうとしていた。そんな彼に、ルハが声をかけてきた。

「うん、もちろん行くよ!」

「少し波が高い。揺れないようにしてくれると嬉しいんだが」

「するする。任せて」

 テレプは、目を輝かせて浜に向かうルハについていった。

 ルハは、一艘の小さな船を取り出す。二人乗りのカヌーである。これで漕ぎ出して釣り針を垂らしたり、網を投げるのが基本的な諸島の漁法であった。人々は食べるために魚を獲る。基本的に自給自足であり、成人すれば皆が海に出る。

「まだ、大丈夫かな」

「ああ。ただ、危なそうだったらすぐに頼む。ひっくり返したらただじゃ済まさねえ」

「はは。ここら辺の浅さならすぐに救ってみせるよ」

「魔法を信頼しすぎだろ」

 テレプは少し視線を落とした。痛いところを突かれたのである。

 漕ぐのを止め、二人は糸を垂らした。

「確かに何か、少し荒れそうな気がする」

「……お前は、あいつらをどう思う」

「え、来訪神のこと?」

「そんなたいしたものなのか」

「わからない」

「なんか変な目で見られる。アタシは珍獣じゃねえぞ」

「キレイだからだよ」

「はあ。そんなこと言うのはお前だけだ。ちゃんと見ろ」

「ルハは言葉が汚いから、みんな惑わされるだけだよ」

「悪口だろそれ」

「ははは」

 笑いながら、テレプは魚を釣り上げた。

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