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「あの鱗、見たか」
「ああ、見た。硬くて頑丈そうだ。武器にも防具にも、加工すればいくらでも使えそうだ」
居住地に戻ってきた来訪神たちは、語り合った。彼らは監視下でしか動かけなかったが、それでも運よく竜を目撃することができた。それは異国において、最も驚くべき発見だった。
「スタンティムの言っていたことは本当だったんだな」
「様々な言語を操る親しい男だとは思っていたが。実際
彼らにとって、スタンティムも異国の者である。ナトゥラ諸島の伝承を知る者を探していたところ、スタンティムに出会ったのだ。スタンティムはナトゥラの末裔と語り、その言語を継承していると言った。そればかりか、すぐに異国の言葉を覚え、通訳をこなすまでになったのである。
「異言語の早期習得」は彼らにとって未知の魔術であった。スタンティムは重宝される人材であるとともに、得体のわからない存在でもあったのだ。
「しかしこれならば、俺たち調査団は断罪されることはないな」
「そうさ、前回のやつらは重罪人みたいな扱いだったからな」
「いくら命令されたって、彼方に着くなんてそう簡単なことじゃない。俺たちは運がよかった」
「まあ、帰れなければ意味ないんだが」
「それは言うなよ」
「光を出す、と言っています」
多くの兵士や魔法使いと、四人の島主たち、族長が二人の男を取り囲んでいた。一人は通訳のスタンティム。もう一人は来訪神の魔法使いだった。
魔法使いは、何やらもごもごと言い始めた。それが呪文だとわかったとき、ナトゥラの魔法使いたちはざわついた。言葉による魔法は、レテを召喚しすぎる。巨大な魔法になってしまうのだ。
だが、穏やかな淡い光が魔法使いの上空に現れた。太陽の光に近い色である。
「なんと」
声を出したのは、皆の師匠である。感嘆の声だった。
「……基本的には、呪文を唱え、力を制御している、と言っています」
「力とはレテのことか」
師匠が尋ねる。
「……われわれの言葉では、
「クメゼド……」
テレプは、真剣な表情でやりとりを見ていた。魔法に別の体系があることは驚きだったが、理解できないわけではなかった。呪文で集めた力を、完全に制御しているのだ。制御自体が、呪文の中に含まれているのかもしれない。
「僕もあれが使えれば……」
テレプは、つぶやいた。
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