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「で、何が望みなのだ」
王の前には二人の男がいる。一人はスタンティム、通訳としてやってきた。もう一人は細い目の中年。彼らのリーダーである。
「……交流がしたいと言っています」
リーダーの言葉を、スタンティムが翻訳する。本当に全く異なる言葉があるものだな、と四代クドルケッド王は感心していた。西から漂着した者たちの子孫であるナクィドも、先祖の言葉を語り継いでいる。それもまた、諸島の言葉とは全く違う。世界には一体、いくつの言語があるのだろうか。などと王は思う。
「交流とは具体的になんだ。はるか海を越えてするほどのことか」
「……学ぶべきことが多いはずだと。私たちの祖国にある技術と、あなたたちのものとを教え合うこと。そして、ものを交換することができます。お互いが豊かになるでしょう」
「それはありがたいことだ。しかしこの土地は満ち溢れている。これ以上は望まない」
「……それはまさに、王の
王は一度、口をとがらせて思案した。
「すぐに答えは出せない。島主や族長たちの話も聞こうと思う。当面お前たちには土地を貸そう。まずは船を修すことが先決だろう。食料も与えよう。ただ、それ以上は今は約束できん」
「……充分です。ただ、良いお返事をいただけるよう日々祈ります」
「わかった。ところでスタンティム、お前の先祖はどこの島か知っているか」
「デギストリア島と聞いています」
「そうか」
こうして、王と客人代表との面談は終わった。スタンティムとリーダーは部屋を出て行った。
「王、一つ聞いていいですか」
臣下の一人が口を開く。
「なんだ」
「なぜ、通訳にあのような質問をしたのですか?」
「たいしたことじゃない。本物かどうかを試したのはもちろんあるが……島がわかれば、可能性もわかる。デギストリア出身となれば、先祖が魔法使いだった可能性は低い」
「そうですね。わかりました」
デギストリア島は昔、優秀な魔法使いたちが集う島だった。しかし彼らが反乱した結果、禁魔の地となった。外海調査を行った時期には、島には魔法使いがいなかったことになる。
「信じたわけでもない。調査に行き、帰って来ずに生き延びた者がいたというのはどうにも信じがたい。また、調査から戻ってきた者の話によれば、東の島には人が住んでいなかったそうだ。そうだとすれば、また別の島から来た者たちということになる。そのあたりもまだよくわからない」
「わからないことが多いですね。なかなか対応が難しいですな」
「あの者が嘘つきでない証があるかどうかだ。色々なことに疲れた。一度休むこととする」
「それがいいです」
王は、目を閉じて深いため息をついた。
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