1-7

 諸島で最初に王になったのは、カルゲ・アス・メテイドである。ルイテルド島で活躍した彼は英雄であり、伝承に詳しくない者もその名をよく知っている。いくつもの争いがあり、メテイドの系統は途切れてしまっているが、「最初の王」として四代クドルケッド王も大いに意識している。

 メテイドの時代、ルイテルド島以外に人々が住み始め、強い統治者が求められた。そして王が生まれたのである。しかし四代クドルケッド王は、強くない。

 常に負い目を感じている。争いが起きた時、彼は自力では勝てないことを自覚している。

 諸島を治めるには、知恵が必要なのだ。そう思って王になる前から、色々と学んできた。そして王となり、知恵を使うときが来たのである。

 異国人がやってきた。

 かつて西から流れ着いたのは、遭難した者たちだった。彼らは幽閉された後、島で暮らすことを許された。しかし今回は、こちらを目指してやってきた。

「やだなあ。めんどくさいなあ」

 王は、唇を尖らせた。そして、いつもとは違う寝床に飛び込む。

 なかなか、目を閉じることができなかった。様々なことを考えてしまう。



「ふむ、何か知らない魔法を使っていると見える」

 朝になり、一人の老人が浜にやってきた。

「あ、おはようございます師匠」

「おはようございます」

 皆が、頭を下げる。レ・クテ島の若い魔法使いは、皆この師匠に習って魔法を覚えたのである。

「ああ、おはよう。テレプはいるか……」

「はい、ここに」

「おお。どうだ、お前にはどう見える」

 そう言って師匠は、杖で沖の方を指した。その先には三艘の大きな船がある。

「船が流れぬような魔法がかけられています」

「うむ。しかもぴたりと動かぬな。なかなかに強力な魔法だ」

「強い魔法使いがいますね」

「気を抜けぬな」

 そう言うと師匠は、その場を去っていった。彼はすでに現役を引退しており、魔法を使うことはめったにない。そのため、警備も任されていない。

 ただ、何もしないわけではない。彼は、族長の泊まっている家に向かった。

「大ごとじゃないか」

 そう言いながら師匠は家に入っていく。

「そうだな」

 族長は、手を組んでいた。眠れていないようで、目の下にクマが刻まれている。

「何でまたここに来たんだ、というところか」

「もちろん。ただ、得られるものがあるならば幸運でもある。お前も何かを見つけたいのではないか」

「そんな時間は過ぎたよ。先に隠居させてもらって申し訳ない」

「まったくだ」

 二人は、若き日のことを思い出して笑顔になった。

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