第十八話 模擬戦(前)

「“魔術殺し”…!?」


「バックアップよろしく!」


走り出す俺に観念したのか覚悟を決める彼女。


「はぁ!!!」


外殻は硬く、魔術への耐性も高い。

だけど相手が悪かった。俺は魔術よりもこっち(・・・)の方が性に合ってる!イメージするんだ。あの時の。

アスモデウスとの戦闘、彼女の剣技。その美しさ。洗練された無駄のない動きを。


グレートスコーピオンの攻撃を避け斬りつける。すれ違い、倒れる魔物を見送った。


藤波さんが倒れた魔物から魔石を回収しながら問いかける。


「相変わらず…規格外なのよアンタ」


「え?」


「なんで鞘のまま戦ってるのよ」


倒れたグレートスコーピオンは斬られ生き絶えた訳ではなく打撃を受け外殻ごと内臓を潰された事による絶命だった。


「実はこの刀抜けなくて…」


「…は?ちょ、っと待って…あんたまさかあの時も…よね…?」


「あの時?あーアスモデウスと戦ってる時も抜けなかったね」


「…」


呆れたと言うよりも絶句の表情をする藤波さん。そんなにおかしいかな?


「力不足なんだ。刀に認めてもらえてない。だから俺はこの刀を扱えるくらい強くならないと。悪魔に負けない為にも…」


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元Aクラス、ミシェル&ラベンダのペア。2人はオリヴィエの取り巻き…ゲフンゲフン…学友。


「ぎやぁぁぁぁぁ!!!」


「むむむむ、む、虫ぃぃぃ!!!ごめんなさい!虫だけは本当ーに!無理ぃぃぃぃ!!!」


・グレートビートル(B)

頭部に生えた大きな角と八本の腕が特徴、硬い外殻に覆われた体長約6mの兜虫(カブトムシ)型の魔物。グレートスコーピオンとは違い外殻に魔術耐性は無く、防御力とそれに見合わぬ飛行性能と俊敏性が特徴。


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元Aクラス、オリヴィエ・フローレンス&元Bクラス、ホロート・バーンのペア。ホロートは陸朗に突っかかってきた赤髪の生徒である。


「流石歴史ある名家、バーン家の跡取りですわ」


「ふん、これくらいできて当然だ」


オリヴィエとホロートの周りにはグレートアントの死骸が転がっていた。凡そ数十。


・グレートアント(C(A+))

体長2mの蟻(アリ)型の魔物。グレートアント1匹の危険度はCと低いがこの魔物の恐ろしい所は数の多さである。1匹のクイーンアント、女王蟻からなる数万匹の群は最大規模にもなるとA+になるという。


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元Aクラス、ユーリ・フォルト&元Bクラス、鵺嶋律のペア。ユーリは背中まで伸びた緑の髪と赤い丸眼鏡が特徴のクールな生徒。


「ほっ…」


「なあ、さっきの幻想魔術か!珍しいな〜もっかい見してや!」


「魔力が無駄になるわ。貴方も無駄に撃つんじゃなくて効率的に魔物の急所を狙った方がいいんじゃない?」


「へいへーい…ってもグレートビーは聞いてへんわ」


「そうね」


「「数が少な過ぎる」」


・グレートビー(B-(A))

体長約2.5mの蜂(ハチ)型の魔物。飛行による俊敏性と尾にある毒針が脅威。グレートアント同様、女王を頭に群れで行動する魔物であり、危険度はAを超える。


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元Aクラス、ローザ・エスカレラ&元Bクラス、シェルス・ルークのペア。


「きゃっ!」


グレートビーの大群に襲われている彼女を庇いながらシェルスは全てを蹴散らす。


「っ…」


召喚魔術で呼び出した金色に輝く蛇はグレートビーを次々に食いちぎっていく。


「あ、ありがとうございます」


「…」


彼女を一瞥し、どこにも怪我を負っていない事を確認すると倒した魔物から魔石を回収しようと手を伸ばすが目眩を起こしその場に座り込む。


「大丈夫ですか!?」


「…問題ない」


ローザは彼を支える為、右腕を掴む。掴んだ右腕には切り傷があり…出血していた。傷口に紫色の液体が染み付いているのを見て瞬時に判断する。


「この傷は…さっき私を庇ってできた傷ですね?」


「…問題ない」


「問題ありです、動かないでください」


「離せ!完璧じゃなきゃダメなんだ!魔石を回収する、どんなに簡単な事も完璧じゃないと…」


振り解こうにも毒の影響か力が入らない。


「なら尚更動かないでください!」


彼女が腕を強く引き体制を崩す。そのまま彼女の膝に頭を乗せる。


「!?」


驚いた。膝枕にではない。彼女が神聖術を使った事にだ。断じて膝枕にではない。


「私がこの力を使えること…どうか黙っていてくれませんか」


傷が治り、体に回り始めていた毒も消えていく。


「俺は恩を仇で返すほど恩知らずじゃない…それに、誰にだって秘密にしたい事くらいあるだろ」


彼女が覗き込む。彼女の顔を直視できず、フードを深く被る。


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元Aクラス、風間都(かざま みやこ)&元Aクラス、鶴音蛍(つるね ほたる)のペア。


「どっせーい!!」


地面を殴りつけると隆起した地面がグレートアントを突き刺していく。


「相変わらず派手に暴れるね蛍」


「なははは!そう言う都も後ろの竜巻はなんだ?」


風間の背後には彼の風属性魔術で作られた竜巻に巻き上げられた数十匹のグレートビー。


「oh、ワタシシリマセーン」


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「やってるね〜机に向かうだけじゃ立派な魔術師にはなれないからね。今度からこういう実戦形式の訓練増やそうかな?俺も楽できるし…」


使い魔を通して映像を見る片村先生。その背後に人影。


「聞き捨てなりませんね」


「どわぁっと!!?」


ソファでくつろいでいたがいきなり背後から声をかけられ驚き落ちてしまった。


「急に声かけないでくださいよ理事長…わざわざ気配消してまで近づく必要あります?」


「この程度気付けないようなら君はまだまだですね」


(と言いつつも、声をかける前に気づいていましたね)


「それで、何のようです?」


「合同になったクラスの様子を伺いに…と言うのは建前で彼女、月夜くんの様子を見に来ました」


使い魔が映し出した画面に映る彼女を見る。

大太刀を軽々と振いグレートビートルを両断する。飛行性能が他の魔物と一線を画しているグレートフライも一刀両断。


・グレートフライ(B+)

蜻蛉(トンボ)型の魔物。魔物の中でも特に優れた飛行性能を有し、昆虫種の中でも最多数の複眼を待ち死角が無い。非常に獰猛な為、自分よりも高ランクの魔物や悪魔にも襲いかかる。


「彼女、ほんとに学生ですか?今学園にいる教師陣も勝てるかどうか分からんですよ」


「君もですか?」


「どーですかね〜。俺は怪我したくないのでそういう荒事は御免ですよ」


「勝てないと言わないあたり君は大物ですよ」ボソッ

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