第十七話 魔物の魔石
ざわざわ、ガヤガヤ…
「えーまずは実習お疲れ様でした。どうだった?」
「どうだったも無えーよ。悪魔殺して終わり、それだけだろ」
「こっちはごっつしんどかったわ」
「ま、その辺りの詳しい事は報告書を読んで知ってる。それにしても今日なんか人が多いなー」
「先生が連れてきたからやろ」
「まあその通りなんだがな。訳を話そう。合同実習の前にAクラスの先生が殉職された」
疑問に思っていた事が解消された。俺たちの学園はAクラス、Bクラスの2クラスの学年。Aクラスの生徒がなぜ、Bクラスの教室に集まっているのか。
「魔術師の数は年々減少傾向にある。つまり、君たちの前に立ち、教鞭を取れるほどの魔術師がいない。なので、クラスを一つにして私が纏めて面倒を見るようにと理事長から託されたので今日からABクラスとしてみんなで頑張ってください…ってほんっとなにしてくれとんのじゃ!あのショタジジイ!!!」
「わぁ…緩急すご」
「俺は問題児たちを見てるだけでいいって頼まれたから教師になったのに!これじゃーしっかりと先生やらないとダメじゃないか!!!」
「う、うわぁ…」
先生が教壇に突っ伏して駄々こねてる…
「ブラック企業勤で毎日死ぬ気で働いても安月給だわサビ残だわで死にそうだったのに…やだぁもう働きたくなーい…」
あ、これあれだ。千都世先生のドンピシャタイプのダメな大人だ。
「はいそれでは気を取り直して、新しい生徒を紹介します。入ってー」
「この人が新しい先生とか学園が心配ですわ…」
「な、先生怖ない?」
「これが社会の荒波に揉まれ擦り切れた大人だ…」
ナムナム…
「じゃ自己紹介してー」
「詠羅月夜(ながらつくよ)。趣味は悪魔狩り。特技悪魔狩り。よろしく」
「詠羅くんは理事長からの推薦で中途入学した生徒ですが、実力は本物です。みんな仲良くしろよー問題起こさないよーに。んじゃ席は適当に座ってもらって」
「初めまして詠羅さん。私はオリヴィエ・フローレンス。よろしくお願いしますわ」
「…」
「ちょっと無視!?」
「オリヴィエ様が話してらっしゃるのに!」
オリヴィエと名乗る金髪縦ロールの生徒が真っ先に詠羅に話しかけるが彼女はオリヴィエに見向きもせず、俺の横が空いていると見て隣に座ってきた。正直に言おう。
すごく緊張する。あの剣技が忘れられない。必殺とも呼べるあの技(ぎ)に俺は魅入られてしまったようだ。
「えっと…これからよろしく?」
「ん」
先生が両手を叩く。騒がしかった教室が静寂に包まれる。
「はい、今日はこのクラスの交流を深めるために実戦形式の模擬戦を行います。ルールは簡単、2人1組のランダムチームを作り学園の敷地内、“巨大魔植物の森”で魔石を取ってきてもらう。魔術の使用及び、銃火器、剣の使用も許可する。怪我をした場合は千都世先生に治してもらってくれ以上、質問はあるか?」
律が手を挙げた。
「先生ぇーただ魔石を取るだけやないやろ?模擬戦言うくらいやし」
「ああ。森には魔物を放っている等級はB−〜Cと言ったところだ。そいつらを倒して魔石を取り、持ち帰る。制限時間は明日の正午だ。因みに明日の正午になるまで森には結界を貼るので出られないから注意な」
「魔物の被害で危険な状態となった生徒がいた場合はどうするのですか?」
そう口にするのは元Aクラスの金髪縦ロールの生徒オリヴィエ。
「俺の使い魔が森を巡回している。危険な状態となった生徒は強制送還するから問題ない。質問も無いようなので森に飛ばすぞ」
そう言い片村先生が手を叩き鳴らすと周りの景色が変わり自然豊かな森へと切り替わる。
「なるほどね、ランダムチームって事はそうなるわけだ。よろしく藤波さん」
「よろしく…」
「早速だね」
「ええ…」
俺たちは気配のする林へと目を向ける。ガサガサと揺れ姿を表すのは体長約7mの蠍(サソリ)型の魔物。硬い鎧のような外殻は魔術耐性も高く、多くの魔術師が犠牲になったと言われている。グレートスコーピオン(B+)別名…
「“魔術殺し”…!?」
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