第五話 彼らの日常
「ふっ…」
「なに笑ってんだ~コノ!」
彼と仲良くなるきっかけになった出来事を思い返して口元が緩んだ。そんな俺を見逃さなかった彼は俺の首に腕を回し頭をグリグリといじる。
「や、やめろよ」
「なんで笑ったか吐いたら許してやるよ」
「昔のことだよ。お前と競争した時の」
「あ~彪雅が異能(ズル)して勝ったやつね」
「あ!?ズルじゃねーだろ!!俺はあん時確か自分の持てる力全て使ってって最初に言ったじゃねーか」
「いやズルだろ。お前の異能の能力知ってたらそんな負けイベやんねーよ」
「ね~♪」
「ぐぬぬぬう…」
何か言いたそうだったが俺と寧々に言いくるめられ不服そうな彼だった。俺と彪雅が初めて出会ってから2年が経った。
「この2年色んな事があったよな~」
「下級悪魔の殲滅は今でも生きた心地がしないわね」
入学から半年ほど経って1年全員による初めての合同任務。本来群れない下級悪魔の群れの殲滅。クラスメイト同士助け合いながら任務を遂行した。
「井上と牧田はいいやつだった」
「あの任務の後の教室の空気は最悪だった。もう2度とクラスメイト殺させるか!ってさ」
お調子者でクラスのムードメーカーだった井上、すぐに調子にのる井上のブレーキ役だった牧田。あの任務で二人は亡くなった。
「私はその後に追い打ちのように任務を入れてきた先生の方がムカつくわ」
明らかに適正範囲外の限りなく上級に近い中級悪魔の討伐。先に派遣された瓦井、宝田、雲寺、百衣、麻幌のクラスメイト達は遺体となって帰って来た。俺と彪雅、寧々の3人でその任務を引き継いだ。
「上級悪魔が二体学校に来たときは流石に死んだと思ったな…」
2年の秋、突如学校上空に現れた上級悪魔の襲撃。上空からの火炎魔術の照射。俺と彪雅、寧々の三人で連携を取り討伐にあたった。群れない悪魔の性質が功を奏し一体ずつ倒すことができた。
この二年でクラスメイトの大半が亡くなり、今では俺と彪雅、寧々の3人だけの寂しい学年になった。
「俺たちももう3年、卒業だな」
「なんでそんなセンチメンタルになってんだよ」
「もう卒業だからじゃない?」
「木の葉が消え去り、木々から青々とした緑が無くなっちまったからだよ~♪あ~寒いな~」
「ああサムイな」
「そうね、サムイわね」
「ちょっとお二人さん俺の詩の何処がサムイのか聞こうじゃないか!」
「寒いとサムイ間違えてるぞー」
「勘違いって見ていて滑稽よねー」
「「ね(な)ー」」
はしゃぐ俺たちの行先は最後の任務。これが終われば俺たちは選択の自由を得る。
魔術師、錬金術師、結界術師、補助者。選択の幅は今でも広いが専門の学校へと通うことでもっと多く“知る”ことができる。俺はこの二人となら何処へだって行ける。そう思っていた。
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