第16話 川沿いの
時刻は午前3時、真夜中。
今日の月は満月が少し欠けている。けれど放つ灯りは充分。目の前がよく見える。
「(居ない…か)」
あの大きい人外、輝く雷霆、あれが忘れられずそして気になってこの川によくふらっと来る。
運が良ければまたあの男に会えるだろうか。神在…確か、そう。会ったら聞きたいことが沢山ある。勿論礼も言わなければならないし。
僅かな会えたらいいなという願望を抱いて立ち寄るが今日も居ない。人の気配なし。
「……」
望むと会えない隠しキャラか何かなんだろうか。
『……ァ、ァァ…』
声─────!
直ぐに構えるが違和感がある。
なんだこの違和感は。人外の筈なのに人の気配がする。
『タ、たス…』『ィた…』『もぇ…ル』
呻きとも言葉ともつかぬ言葉が木霊する。その持ち主はすぐに光に照らされて特定出来た。
「……は」
なんだ、これは。
最初に浮かんだ言葉がそうだった。
「………なに、なん、だ」
揺らぐ。
相手は人外。悪だ。絶対的な悪だ。でも目の前にいるのは─────
「ッ……」
人間だ
黒い液体のようなものに包まれた人間。黒い液体は人体の骨や内蔵を蝕んでいるのか変な匂いがする。鼻がひん曲がりそうだ。
助けを求めるように此方に出される手により意思があると確信する。
そのように歩く様はまさにゾンビ、趣味の悪いゾンビだ。
「(なんだ、どういうことだ)」
相手は人間?人外?分からない。
手が震える。相手を斬り捨てたとしてそれは殺人じゃないか。
殺人?やらなきゃいけないのか、でも……
『ァァ………ァ…AAAAAAAAAAーーーーーッ!いたいいたいいたいいたいたたたたたァーーッッ』
突然狂ったように奇声をあげるが苦しんでること、助けを求めていることは分かる。
「……ッぐ」
胃から込み上げる何かを必死に堪える。
殺人。救済。殺人。救済、その言葉がずっとぐるぐる頭を回る。
病院なら術があるだろうか。でも時間を掛けすぎたら人間は、どうなる?となると斬り捨てた方が良いのか、これ以上の苦痛を、与えては…
『ァァァァァァーーーーーッ!!!!』
耳を劈く奇声と共に放たれる火玉。魔法も使える、のか。
はっとして避けたものの頬を掠めた。けど痛くない。単にこんな状況だから感じないのかそれとも、相手に意思があるから上手くできないのか。
構え直すものの攻撃に転じれない。
どう、どうすればいい。相手の動きはとろいし当たることはまずない。
出来れば救いたい。でもその術を知らない。考える時間はない。
どうにかしたい。どうにか、どうにか…!
「甘いんだよ、永夜の坊。」
その言葉と共に1つの光が腹を貫いた。
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