第15話 黄昏

「親族…!」


 有り得る話だ。家柄という概念があるならばそれに纏わる本流、傍系、というのもある。血が繋がっているのだから当然見た目も似るが…、


 明星は銀髪、星魔せいまは金髪…あんまり似てないような。


「他の家でもそういう関係値はあるんですか」


 知らないことは聞く。絶対歳上だし何かしら答えてくれそうだ。

 それに、刀を振るうものとして知れることは知らなければならない。


「ありますよ。なんなら永夜がそうでしょうよ。」


「へっ」


 え?

 ある、のか。なら、挨拶とかやらなければいけない、のでは。


「今はもう亡き血筋です。黄昏たそがれという血筋でした。」



 ❖



 時は父、凪まで遡る。


 凪は元々体が強い方ではなく1度人外を斬り捨てたら1週間は寝込む。

 その間、この永夜町の指導者がいなくなり人外の指揮もままならなくなる。


 その指揮を変わりにしていたのが黄昏。まさに夜の影、表立って行動はしない影武者。


 黄昏の始祖は永夜の始祖と共に不明だが古くからの仲…らしい。


 そんな黄昏が何故亡き血筋になったのか。

 それは明星によるものだった。


 ちょっとしたいざこざが起き黄昏と明星が対立、武力へと発展し周囲が止める間もなく明星が始末してしまった。



 ❖



「……とまぁこんなもんです。夜の影とも呼ばれた黄昏は居なくなってからは随分苦しかったでしょうね。現に凪さんはその腕は確かなものの黄昏が亡きものとなってからはその腕を振るわなくなりました。」


 明星は永夜を支える存在、それが重要な影武者を亡きものにした、のか。

 それは謀反だ。明確な反逆。


「凪さんは随分明星様の事を溺愛していましたし、罰するような体力もありませんでしたから。」


「そう、だったのか」


 溺愛していたから判断が鈍ったのか。探せばそれに関する書類は出てきそうだが…。家になかったら辰星にでも頼ればいい。


「……充分な知識が携わってないようで」


「……まあ、はい。」


 目の前の事に集中しすぎて本当に必要なものが欠けていた。

 本当はこうして教えられる前に調べなければいけない。


「ま、無理もないです。あまりに突然すぎましたから」


 無理矢理大人になったから見逃されているだけだと痛感する。

 今からでも大人になるのは遅くないだろうか。


「……話は終わった?」


 今まで黙って話を聞いていた光姫みつきが口を開いた。


 自分がここに来るまで星魔せいまと話していたのだろう。親族との会話を遮ったことになる。

 不機嫌だったのも頷ける。


「終わったなら出てって。誰とも、特にお前とは話したくない」


 積もる話もあるだろうし、自分もやりたいこともある。ここは潔く引くのが正解だ。


 時刻は昼過ぎ、今日の夜もきっと刃を振るう。

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