第14話 星魔

 タッタッタッと階段を1段飛ばしで、いいや、2段飛ばしで駆け上がる。


 ここは病院、絶対に走ってはいけないところ。でも急ぐには訳がある。


光姫みつき……!」


 と扉を大きな音を立てて開け放ち、その名を呼んだ。


「うるさい。帰れ。失せろ。」


「う"」


 いつもより言葉の槍が鋭い。

 機嫌が悪いのは確定として、体調が悪かったりしてそれも関係あるのだろうか。


「……怪我、怪我とか」


「……なに?お前の耳は節穴なの?」


 胸ぐらを掴まれそうになるが横から手が入り制止される。


「まあまあ、心配されてるんだから」


 その手の持ち主の風体は明らかヤンキー。タバコふかしてるし、金髪だし。…つかここ病院。


 だからこそ服装が似つかわしくない。白衣、白衣だ、医療関係者の!


「ま、女の子だから不安定な気持ちも医者として理解するけど」


 その風体で女の子という単語が出ると犯罪者臭しかしない。


「え〜っと…貴方は」


「ああ、名乗らないと」


 ふぅ〜と一気に煙草を吸い、白い息を吐く。そして指で火を消し、部屋の隅にあったゴミ箱に見事なコントロールでシュート。


星魔黎亜せいまれいあといいます。この星魔総合病院の院長、星魔の当主やってます。」


 言い回しが完全に裏の者だ。まだ50…いや、40いってないような見た目なのに妙な貫禄がある。


 星魔…か、どっかで聞いたことある…よう、な、ないような。


星魔せいま、さん」


星魔せいまでいいよ」


「で、では星魔せいま


 完全に歳上だから敬語を使わないといけないがその敬語を外してくれという。

 これから聞くのはかなり、結構、グレーな事なのだが…


「その…角、は……?」


「あー、これですか」


 人の容姿について言うのはやめておいた方が良いと思うが突っ込まずにはいられなかった。


 完全に人外の角というか、作り物にはない圧倒的な艶…というか、生き物感というか、感じるのだ。

 よく見れば耳も長く尖っている。


「始祖様の血を濃く受け継いだ結果、ですね」


 始祖。


「始祖様はドラゴンでしてね。その始祖様は森の精、エルフを娶り子を成し、その子もまた子孫を成し…その繰り返しの果てというやつです」


 ドラゴンにエルフ。

 人の常識内で考えてはいけないが正反対というか、子が出来るのか。

 奇跡というか、出来たとしても不安定そうだ。


「ちなむと名まで伝わっています。名はシャルルマーニュ、覇王と呼ばれた騎士であると」


 覇王……騎士……

 つまるところ下っ端が王になった…というやつか。いや、その騎士はドラゴンだから下っ端というのは有り得ない気がする。

 狭い器にハマっている騎士でないから王にでもなったのだろうか。


「更にちなむとですね」


 通販?


「明星の始祖様とは家族関係にあったとしつこく伝えられています」


 しつこく…そんなこと言っていいのか。

 いや、それはつまり…


「明星の親族っちゅーやつですね」

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