第10話 善悪
時は2時過ぎだろうか、昼を少し過ぎたが夜を考えるには少し早い。何をするにも自由な時間、遊ぶも学ぶも良し。やるべき事を終わらせるのもまた良し。
「(病院は混んでるだろうか)」
誠也はと言うと病院に向かっていた。
昨夜の傷は塞いでいる。痛みがない。だが念の為医者に見てもらおう。
永夜町の病院と言うと星魔総合病院。
入院も診察も手術もやってくれる、言わば万能病院。どんな症例でも看てくれる。
そんな病院があるのは封印業というものがあるからだろう。
人外による傷は多岐にわたる。その症例にあわせて病院を転々とするのは非効率的だ。
助かっているのは何も封印業だけではない。
とりあえず
そのため混んでいるかどうかという心配を抱くのは当然のことだ。
「……花」
道すがら、花がぽつり。
周囲は家が立ち並ぶ。ここら辺は事故なども少なかったはず。
となると…
「(帰りがけに寄るか)」
❖
病院に着くと案の定混んでいた。
と言ってもマシな方で待ち時間は15分程。これが混んでいると1時間前後は当たり前。
「(2時過ぎ…ピークが終わった頃だろうか)」
事務作業をしている看護師の顔を見ると心做しか表情が穏やかでほっとしているようにも見受けられる。
お疲れ様、という言葉しか出てこない。
場合によっては封印業よりも精神的苦痛、肉体的苦痛を伴うものであろう。
「……ん?」
ふと、横切った看護師を見る。ついつい声を上げてしまった。
何故ならその看護師は人外……"獣人"と呼ばれるものだった。
頭から兎の大きな特徴的な耳があるのだ。はっとして周囲の人、看護師を見ると人外はそれなりに居た。
「………??」
分からない、人外は人を襲うはず。
そこまで感想を抱いて矛盾に気づく。
自分達の始祖も人から外れた者、所謂人外ということに。
辰星は神、明星は
「………」
分からない。
人外を悪だと信じて刀を振るっていたからこそ本当に分からない。
善なのか?
❖
診察の結果特に異常なしだった。
そりゃそうだろう、治癒を受けたのだし。
念には念を重ねすぎる方が命を守るのだ。
帰り道、見かけた花の傍に1人の老婆が手を合わせていた。
聞けばやはりと言うべきか、長年連れ添ってきた旦那が夜の散歩中に人外に襲われ亡くなったと言う。
ごく最近起きたのだろう、傷は癒えてないようにとれた。
遺体は見つかったとはいえかなり損傷が激しく顔なんかは見れなかったという。
分からない、悪なのか?
一度矛盾に気づいてしまったらもう戻れない。何が正しく、何が善なのか、本当に自分のやってる事は善なのか、分からない。
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