第9話

あれから3日。


涼からの連絡は無かった。


私もしつこく連絡はしてない。




どういう意味なんだろ?

涼は私が好きだった?

いつから?



あのモテモテの涼が?



もしかして、罰ゲーム?



あんなに優しい涼がそんなことする?



あれから連絡つかなくて、なんか心配だなぁ。



こっちから連絡してもいいかな?



できれば会って話したいけど。変に緊張しちゃいそう…。


電話で話そう。それがいい。


一応確認をとる。


『電話してもいい?』


前のはまだ未読だったから、忙しいのかと思ったけど。


すぐ既読がつき、


『いいよ』


と、返信がきた。



私はすぐさま涼に電話をかけた。


『もしもし?涼…』


『この前はごめんね』


『え…涼が謝ることはないよ?』


『結南、びっくりしたでしょ?でもね、あれが僕が伝えたかったこと。』


『…?』


『実はさ、一人称、一応…なんだ。』


『そうなの?知らなかった…』


『隠しててごめんね。どう思った?』


『え?別に…言ってくれてありがとう』


『結南、やっぱり優しいね。』



私は優しくなんかないよ。


なのに、涼はいつも私を褒めてくれた。


涼と出会ってから、いろんなことが変わった気がする。



『ねえ、結南…僕はね、幼稚園のときから結南が好きだったんだよ。結南は覚えてないかもしれないね。でも…僕は結南のこと、ずっと好きなんだ…』



『そう…だったんだね』


私は驚くほど冷静だった。



幼稚園の頃から私のことを知っていたことに驚きつつも、同時に申し訳ない気持ちになった。



『でも、私には彼氏がー。』


『知ってる。』


『ど、どうして?』


『武尊にきいたよ。』


『そう、なんだ…。ごめんね』


『でも、どうしても結南に気持ちを伝えたかった。それだけだよ。。』



嫌な予感がした。


私の体は勝手に家の外に出た。そして、通話を繋げたまま、走り出した。もう、夜だった。





暗闇の中を必死で走った。


もうちょっとで涼の家だ。



『ねえ、涼…今から家に行ってもいい?』


『いいけど…。僕の家に行っても…』



その先をきくのは怖くて。


怖かったけど。


きかなきゃ、と思った。




『行っても…?』


『僕はいない。と、いうか、誰もいないよ。』


ちょうどその時、涼の家の前についた。




『僕…フランスに戻るんだ。』



窓から家の中が見える。


カーテンもない。


ほんとに何もない。




『着いた?…何もないでしょ。』



ぽろり、と涙が溢れた。



『ほんとは、卒業式で告白しようと思ったんだ。でも、そんな勇気無かったんだ。

武尊より先に言いたかったなぁ。



−−−好きだよ、って。


またね、結南−−−』




電話が切れてしまった。


私は、涼の家の前で崩れ落ちて、泣くことしかできなかった。


「うぅっ、涼–−−」


しばらくそこでひとり、泣いていた。

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