第8話

【涼side】


これは、一目惚れなのか。



結南をみた瞬間から、好きだったけど。



いつからかって?


小5…だと思うでしょ?





実はね…幼稚園から。



同じ幼稚園だったんだよ、俺たち。あんまり遊んでないけど。


まあ、覚えてないのもわかるよ。

だって、俺はすぐにフランスに行ったもんね。


年少の時かなぁ、お父さんの仕事の関係で。


そこでサッカーをはじめたんだ。それで、小2のときにまた帰ってきた。結南は俺のことを覚えてなかった。



それでも、俺はまだ結南のことが好きだったんだ。


俺と同じだから。


“かぐら”っていう名字も。

サッカーが大好きなのも。

ひとりっ子なのも。

おいなりさんとそばが好きなのも。

読書が趣味なのも。


同じだった。



読書が好き。


意外でしょ?


俺…いや、僕は…ほんとはもっと静かな人間なんだ。


陽キャを演じているけど。


一人称だって、『僕』だから。


でも、『俺』にしたら、なんとなく強くなった気がしたから。

今思えば、アホらしい。


サッカーがうまいと、自然と明るくて元気なイメージが定着するらしい。



いつしか結南は、元気な男の子が好きだと言っていたから、ちょうどよかった。



でも、結南は僕が好きじゃない。そんなこと、最初からわかってたんだ。


でも僕は諦められない。だから…



『俺、好きな人ができたんだ。』



こんなことを結南に送ってしまったんだ…。


それで気づいてくれると思ったけど、やっぱりすぐにはわかんないか。



『中学で同じクラス?』



結南は自分だと思っていない。


これを答えてしまうと、1人…七森こころに絞れちゃうのかな。


そうだと思われたくない。



だって…僕が好きなのは、結南だから。



『その人はね、中学受験したから、同じクラスにはなれないよ。』



ついにそういってしまった。



『あ、サッカーの練習始まる。またね』



大嘘だ。



僕はそれっきり、スマホを閉じてしまった。

逃げてしまった。


結南に嫌われたんじゃないかって。怖かったんだ。


そのあとも、結南からの通知がきたけど、未読無視をしてしまった。



「何やってんだろ、僕…」


僕はなぜか涙を流してしまった。

悔し涙?後悔してんの?


違う。後悔なんかするもんか。


自分で自分の気持ちを伝えるって決めたんだろ。



でもなぁ。



なんか悔しいんだよー。


だってさ、今日。


武尊から聞いたんだよ。

武尊は僕の親友だ。


だから純粋に恋を応援してた。

だけど、その相手が結南だった。


『俺さ、結南と付き合うことになったんだよね』


なんでだよ。


悔しいなぁ。もっと早く告白すれば良かった。


僕の方が結南を想っていた期間は長いはずだから。



でも、結南も武尊のことが好きなのかなぁ。


そんなことを考えていたら、いつの間にか寝てしまっていた。



ーーーーーーーーーーーー 


3日後。



今日は土曜日だ。



あっという間だった。


僕は自分の部屋を見渡した。見事に何もない。



なぜかって?



僕は引っ越すんだ。



いや、戻るのかな。




もう今日出発だよ。





ーフランスに。



             【涼side fin】




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