第5話

すぐに涼の既読がついた。


『ヒントかぁ。ところで今何人にしぼれた?』


『今6人!!』


『おー、6人。やるじゃん。』


そうかな?まだ6人もいるのに。


『まだ6人もいるよ?』


『いや、すごいよ。ヒントあれだけだったのにあんなしぼれるなんて。』


涼は、なんでも褒めてくれる。


『涼って、優しいよね。私なんかを褒めてくれるなんて…』


『まーたネガティブモードに入ってるぞー!

結南は本当にすごいから褒めたくなるんだよ。


−−−結南は、もっと、自信を持っていいんだよ!』



いつのまにか私は小5の時を思い出していた。



ーーーーーーーーーー



2年前。つまりは、私たちが小学5年生のとき。



私は、新しいクラスに慣れるか不安だった。


当時の私はあんまりフレンドリーとは言えなかったし、何より5年生クラスがそのまま6年まで2年間続くっていうのが不安だった。

しかも仲のいい友達とクラスが離れてしまった。


始業式の日。私は一番乗りで教室に入り、みんながくるのを待っていた。(とはいえ友達はいなかったけど。)



自分の席に座り大人しく待っていると…。



「おはようございまーーーす!!!!」



私はびっくりしてドアの方を見た。


そこには爽やかなスポーツ少年(?)がいた。



「あ、れ…1人しかいない…俺、今めっちゃ恥ずいことしたよね?」



顔を真っ赤にして焦ったように話す男の子。


私はつい、くすっ、と笑ってしまった。



「ごめんね…ちょっと面白くてさ」


「ああああああああ!!!始業式始まる前から黒歴史つくっちゃったよー!!

華紅羅さんどうしよううう!!」


「…?どうして、私の名前を…?」


すると、男の子はやけにアワアワして、


「お、おれも、“かぐら”っていう名字なんだ!!だ、だから、なんかその…出席番号だって隣だし、つまり席も隣だし…!」


「え、あなたも“かぐら”!?」


「そうだよ、漢字は“神”に“楽”だけど」



そうなんだ…。それじゃあ、私達…


「「同じだね」」


!?


え、ちょ、ちょっと何言ってんの私!!


しかも、神楽くんとハモった!?



私達はお互い赤くなった。



「お、同じ…名字、だね」


「う、うん」




「そ、そうだ。俺と5年生最初の友達になってよ!なんかの縁だし!!」


「え、いいの?私は全然嬉しいんだけど…その…ほら、私って友達少ないし、地味だし…神楽くんみたいに顔が整ってるわけでもない、なんの取り柄もない人間なんだよ?」


「そんなことない!」


「え」


「華紅羅さんは、素敵な人間だよ!華紅羅さんは−−−」




−−−もっと、自信持っていいんだよ!



神楽くんは、そう続けた。


「なんで、そう思うの?」


「…なんとなくだけど!そー思うんだ!


しかも、華紅羅さんは、か、わ」


「川?」


「い、いや、なんでもない!それよりさ、名前で呼んでいい?かぐらだとさ、ホラ、ややこしいじゃん!?」


「え、いいけど…」


「じゃあ、結南!よろしくね」


「りょう…くん、よろしく、ね」


「いや、そこは涼って呼んでよ!?」


「そっちこそ、なんで呼び捨て!?」


「いーじゃんか!」


「じゃあ、涼?よろしく」


「う、わぁ!」


「?」


なぜか顔を赤くした涼。それから、いろんなことを話したら、サッカーをやってることも、ひとりっ子なのも、好きな食べ物、好きなことも一緒だった。


「俺たち、やっぱり、」


「同じ??」


「う、なんでわかんの?」


「なんとなく!」


「…真似しないで!あと、さっきの、忘れて!!」



「さっきのって…あ、最初の黒歴史か…ふふっ。待って。今ので思い出しちゃった。忘れられないかも。ごめんね」


「そんなぁぁぁ!!」



これが私たちの出会い。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る