第44話 ルナリア公爵家
「お待たせしましたわ! 遅くなりすみません!」
「あなたは……! マリアーナ様!」
マリアーナ・ルナリア。ルナリア公爵家の娘でギルテット様の兄である王太子の婚約者。マリアーナ様は私より2歳ほど年上なので……義理の姉になるのか?
「シュネルさん、お会いしたかったですわ! さあ、皆さんこちらへ!」
マリアーナ様に腕を引っ張られてその勢いのまま大広間へとかなりのスピードで移動する。大広間にはルナリア侯爵とその夫人が丁度やってきたところだった。
「すみません皆さん! 遅くなりまして……!」
「いえいえ、お気になさらないでください」
私がそう謝罪すると公爵家の3人はどうぞ座ってくださいと私達へ伝えた。私はギルテット様を見ながらソファにゆっくりと座る。ソファの座り心地はとてもふかふかしていて気持ちいいものだ。
「えっと、紅茶はそのままでいいですか? それともお砂糖かミルク入れます?」
「マリアーナ様、私はそのままで結構です」
「俺もそのままで大丈夫。シュタイナーは?」
「はっ俺っすか?! じゃあ、ストレートで」
「わかりましたわ。……ギルテット王子もシュタイナーお兄様もお元気で何よりです」
(シュタイナー「お兄様」?)
マリアーナ様のシュタイナーへの呼び方にちょっと引っかかったが、シュタイナーの事も考えるとこれ以上突っ込まない方が良いだろう。
「お待たせしました!」
マリアーナ様とメイドが3人分の紅茶を用意して目の前に配置された金細工とガラスで作られたテーブルへとことことと置いていく。彼女の茶髪と色白の肌がガラスに反射して映し出されている。
「あちがとうございます」
「どうぞお飲みになってください。すみません、ばたばたしてしまって」
「いえ、マリアーナ様。お気になさらないでください」
「おぉ”ん!!!」
私の右前方にある部屋の扉がきい……と開いたと思いきやそこから狼が1匹マリアーナの方へととことこと駆け寄って来た。狼にはピンク色のスカーフが首輪代わりに付けられている。
「もう! グレース今大事な話してるとこだから! ちょっと待っててくれる?」
「ぐう……」
「え、私も一緒じゃなきゃ嫌? そうね、シュネルさんが気になるわよね。……皆さんすみませんがグレースをこの場にご一緒にしてもよろしいですか?」
グレースという狼はマリアーナ様の左側へとちょこんと座っている。それにしてもルナリア公爵家は狼も飼育しているのか……。
「ぜひお願いします」
ギルテット様とシュタイナーからも異論は出なかったので、グレースを交えたまま話が進む事になった。聞けばグレースは生まれたばかりの頃にこの屋敷の庭に迷い込んできたのでそのままこの屋敷で飼う事になったらしい。
ギルテット様がルナリア公爵家が運営する動物園には行かなかったのか? と質問するとマリアーナ様にグレースはなつき過ぎて離れるのを嫌がったのでこの屋敷で飼育する事になったのだそうだ。
そしてさっき私達が屋敷を訪れた時にバタバタしていたのは中庭の池にグレースが落ちてしまい、彼女を救出しようとしていたからだった。この時マリアーナ様の身体は池の水で汚れてしまい、着替えや化粧直しなどに追われていたとか。
「では、お話ししましょう。私達はもちろんシュネルさんを養女としてお迎えする事に賛成です。あなたの苦労は私達の耳にも届いております。ぜひギルテット王子と幸せになるならどのようなサポートも致す所存にございます」
「公爵様……ありがとうございます」
「もっと早くにあなたの事を知れば、と悔しい気持ちであふれているくらいです。お力添えできず申し訳ない」
「いえ、そんな……」
公爵様がそこまで私を気にしてくださるなんて思いもしなかった。確かにもしもっとはやくにここの養女になっていたらソアリス様と結婚せずとも良かったかもしれない。
でも、たらればはこれ以上考えても何かが変わる訳じゃないので考えるのは止めた。
「これからはルナリア公爵家の娘として、これまで通り過ごして頂いて大いに結構です。もちろん、デリアの町で看護婦として働いていただくのに支障はありませんからご安心を」
「ルナリア夫人、ありがとうございます」
「貴族の令嬢が看護婦として町の人達を癒しているのはとても素晴らしい事です。もちろんギルテット王子が医療に優れ同じく町の人達を献身的に支えているのも素晴らしい事ですから」
こんな素晴らしい方達の家族になるのか……。まだ実感が湧いて来ないが、とても胸の中が充足感に満ちているのだけは理解できた。
あとがき
ルナリア公爵家はアルテマ王国唯一となる動物園を運営しています。国内外から集められた動物がここで飼育されており野生の動物を保護し森や海に返す活動もしています。
ちなみに大型動物だと象やシャチを飼育していたりします。最近シャチの子供が生まれたそうで、彼らに対する研究も行われています。
そしてマリアーナはシュネルが通っていた貴族学校ではなく、隣国にある王立の学校に留学しそこに通っていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます