第2怖 誰?
友達と2人で旅行に行った時のこと。行き先は、有名ではないが、前から行きたいと話していた温泉地だ。しこたま温泉を楽しんだ後、予約していた旅館へ足を運んだ。
「おぉ。すげえ風情あるなあ」
「これがエモいってやつ?」
なんて会話を交わしながら、夕食を平らげたあと、改めて温泉に入ろうと旅館にある温泉へ向かった。閑散期だったのか、2人での貸切状態だった。
「俺ちょっと喉乾いたし先上がって自販機行ってくるわ。なんかいる?」
お風呂で友人がそう言った。
「あー、じゃ俺コーラ」
「おっけー。んじゃ先上がって部屋戻っとくわ」
そんな会話を交わし、1人先に上がったあと、自分も部屋へ戻った。
「ふー。いい湯だった。髪乾かさないと」
「おかえり」
どうやら自販機へ行っていた友人はもう戻っていたようだ。
「あ。わりぃ、俺のカバンから化粧水とってくんね?」
ドライヤーをかけながら、友人にそう頼んだ。すると、洗面所のドアが開き、ひょこっと化粧水が出てきた。
「さんきゅ。ところでどうする?売店行く?」
「うん」
「あとちょっとこの辺散歩しねえ?」
「うん」
洗面所と部屋という少し遠い距離での会話をしている最中。入り口の扉がガタッと開いた音がした。
「はー。やっと着いた。迷っちまったよ。はい、コーラ」
まったく理解できない。会話をしてると思っていた人物が、たった今、部屋に戻ってきた。
「え?」
「え?ってなにが?」
「いや、お前今俺と会話してたじゃんか。『うん』って言ってたじゃんか。化粧水だってとってくれたじゃん」
「何言ってんの?俺今帰ってきたとこだよ?」
「は?じゃあ俺、誰と喋ってたの?」
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