第6話 俺には無理だ
「それで一体どうするつもりなんだ?」
そう尋ねると彼女は
「えっと、できれば偽の恋人になってもらえると嬉しいです。」
と言って頭を下げる。
「てか、付き合ってることを撤回して、彼氏を作る気がないって断言すれば良いだろ。」
俺がそう言うと、
「そんなに簡単な事じゃないんだよ。特に私くらいモテる女は。それに私を良く思わない女子から何されるかわかったもんじゃない。」
と、彼女は食い気味に反論してくる。
「そんなに面倒くさいのか?」
「そうだよ、この前も好きだった男子が私の事が好きで、さらに振られたからって嫌がらせされたし。」
「だから今更撤回する訳にはいかないのよ。」
女子間のトラブルにも巻き込まれていて大変そうだ。……本来俺は関係ないはずなのだが。
「だからお願いします。」
どうすれば良いのか、俺はもう面倒事に巻き込まれたくない。
誰かの助けをするのは余裕のある奴がすることで、一人で大変な俺がするようなことではない。 けれど、
(頭を下げられて拒否するような度胸はないんだよな。)
その後数分葛藤した上で、
「わかった。協力するよ。」
と結論を出したのであった。
ああ、面倒事は嫌なのに困っている人がいると無視できない。
だから吉永に、お前は優しすぎると言われるのだ。
だけどこれを辞めるのは俺には無理だ。
だってそうだろう。
過去に善意を踏み躙られ、トラウマを植え付けられ、どんな苦渋を飲まされても、俺は今日、彼女のことを無視できなかったのだから。
逃げたがりな俺と勇気のある彼女の話 矢見山空御 @gekkou261
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