第5話 ああ、面倒くせぇ

 放課後、昨日渡された連絡先に

『教室で待ってる』と連絡する。

 すると数分で、


 「ごめん、待った?」

 そう言い、汗をかきながら教室に訪れた。

 

 (相当急いで来てくれたんだな)

「いやこっちがいきなり呼んだんだし大丈夫だよ。」

 そう言うと彼女が肩を震わせる。

「そっちこそ大丈夫か?体調悪いならまた今度話そうか。」

「いやいや、大丈夫だよ元気元気!」

 そう言って笑顔を見せてくるがどう見ても作った笑顔で元気があるようには思えない。


 (何だ一体)

 そう思っていると彼女が目を泳がせながら口を開く、


「えっと……ごめんなさい!」

 と、突然謝ってきた。

 どうやら彼女の体調が悪そうに見えたのは俺に怯えていたのが原因のようだ。


 (この人にとっての俺の印象ってどうなってんだよ!)

 そう現状に混乱していると彼女が話を続ける。


「えっと、昨日の告白の時に君との予定があるって誤魔化したじゃん。それが噂になってていつの間にか周りの皆んなが付き合ってるんじゃないかって話してて、でもそれを否定すると他の男子からの告白が続くから、付き合ってるって嘘をついて。そしたら思った以上に広がって。つまり、私の都合で君を巻き込みました。ごめんなさい!」

 とかなり早口で説明した。


 (畜生、本当に大きな面倒事に巻き込まれたな)

「だからその・・・・・・どうすれば許して貰えますか?」


 (……はぁ)

「別にいいよ。面倒事に巻き込まれたことは納得できないが、一応許すよ。」

 咄嗟にこんな言葉が出て来るのだから、俺は口が得意なのかもしれない。

 そんなことを思っていると、彼女は不安がなくなったのか、明るい笑顔になる。

 いい顔だ、これこそいつもの神崎彩葉だ。


 (でも、これからどうしようか)

 これからのことはあまり考えたくない。

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