第3話 イメージの崩壊
俺を引きずってしばらく経つと、彼女は一つの教室に入り、不意に俺の腕を離す。
「ごめんね、こんな事に巻き込んで。大丈夫?」
「……」
いや急に謝られても、まだ理解出来ていないんだが?
俺が見てわかるように困惑するが、そんな事気にせず彼女は言葉を続ける。
「最近告白が多くてさ。正直うんざりしてるんだよね。」
「……」
「それに、君も私の胸を体験出来たんだし役得だよね!」
「誰だお前!」
「失礼だね、学年でもトップレベルに可愛い神崎彩華さんだよ。」
「嘘つけ!いつもの神崎さんは静かでまさに高嶺の花のような人で君のような自己肯定感が高い人じゃない。」
「だから失礼だね。これが私の素だよ。」
俺のイメージするおしとやかな神崎さんが音を立てて崩れていく。
いつもとの豹変ぶりに困惑している俺に、
「ごめんね、こんな事に巻き込んで。途中から体調悪そうにしてたし。」
と申し訳なさそうに言ってくる。
「別に気にしてないから大丈夫だよ。」
嘘である。
めちゃくちゃ気にしている。
というか女子と二人きりの現状を理解してしまったせいで少し震えがする。
(何も考えないようにしよう。)
そしてボケ〜としていると。
「えっと、何をすれば許してくれますか?」
と彼女に尋ねられる。
(……はぁ?)
「何でもは無理だけど、ちょっとだけなら。」
(???)
彼女にとって俺の印象は一体どのようなものなのだろうか。
少なくとも普通でない事はわかる。
彼女の情緒はどうなっているんだ、そう思いながらも優しく、
「面倒事に巻き込まれないなら良いよ。」
と言う。
我ながら優しいと思う。
もう面倒事には巻き込まれている気がするが、
「任せて!柊木くんには迷惑をかけないようにするから。あ、私の連絡先これね!じゃあまた明日!」
と彼女は元気な声で発する。
今の彼女から発せられた言葉が信用出来ない。
てか連絡先をもらってしまったが一体どうしようか、でも女性が苦手な俺には必要無いだろう。
そうして面倒事に巻き込まれ、疲れながらも帰路に着いた。
まあ、任せてって言ってたし大丈夫だろう。
彼女は他ならぬ神崎彩華なのだ。
この程度の試練、彼女なら容易く解決してくれるだろう。……多分。
俺はこの時、この出来事を他人事のように考えていた。
これから自分も当事者になるとも知らずに。
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