第2話 巻き込まれ事案

 ある月曜日の放課後、

 俺は帰宅の準備をして教室を出て行った。

 いつもは帰宅方向が同じの吉永は彼女とデートをすると言って先に彼女の学校を出て行った。


「はぁ……」

 前を向いて青春を謳歌する友人と自分をどうしても比べてしまう。


「俺だってあんなことがなければ。」


 そんな負け惜しみのような言葉か溢れる。

 それくらいあの出来事は俺の記憶に植え付けられてしまっている。

 気分を変えようと思い、自販機で缶コーヒーを買ったとき、何処かから声が聞こえて来た。

 いつもの俺だったら面倒事には関わりたくないため特に気にせずに帰るだろうが、今日の俺はついつい気になってしまい、声のする方へと足を進めた。

 自販機から二つほど離れた教室から二つの声が聞こえてくる。

 一つは女子の声、もう一つは男子の声。


 (てか女子のほう神崎さんじゃね?)

 いつも教室で聞こえてくる声なので気づいた。

 大方男子の方が告白しているんだろう。

 そう結論付けて帰ろうとしたとき、


「ドゴーーン!」

 盛大に転けてしまった。

「「……」」

 というかさっきまで声が聞こえて来た教室が無音なんだが。

 気まずいのですぐに立って離れようとして、


「柊木くん?」


 よりにもよって告白の当事者に声をかけられてしまった。

 神崎さんは声をかけた後、何か考え込んでしまっているし、男の方も気まずいのか無言で突っ立っている。

 本当に気まずい。

 そう思っていると神崎さんが一言、


「ゴメン、実は彼との予定があって。」




「……はぁ?」


 何を言い出すんだこの女、頭が壊れてんじゃねえか?

 てか面倒ごとはゴメンだ。

 そしてすぐにこの場から離れ……ようとしたが神崎さんが俺の腕に抱きついて来た。


 (……は?)


 訳も分からずとにかく振り解こうとするが、何故だかびくともしない。

やめてくれ。嫌な記憶が蘇る。背中に寒気がするし、だんだんと気分が悪くなって来る。

 振り解こうとしているうちに「ゴメン、じゃあね。」と今度は俺の腕を掴んで引きずって教室から離れる。


マジで何なんだこいつ。


そう思いながらも俺は彼女に引きずられて行く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る